べい(読み)ベイ

デジタル大辞泉の解説

べい[助動]

[助動][○|○|べい|べい|○|○]《推量の助動詞「べし」の連体形「べき」の音変化》「べし」に同じ。「さあ、行くべい
「がいに手間を取るべい所で難義をしべい」〈雑兵物語・上〉
「おのらが口から言ひにくくば、身共が直に言ふべい」〈浄・千本桜
[補説]「べい」本来の連体形の用法は平安時代から見られるが、終止用法を有する「べい」は、中世以降、東国を中心に行われた。現代語では、「べい」の音変化形「べ」「ぺ」の形を含めて、関東・東北方言などで終止用法として、多くは推量・意志・勧誘の意で用いられる。また、「べい」の接続は、「べし」と同じく活用語の終止形(ラ変型には連体形)に付くが、しだいに複雑化し、江戸時代の東国方言では、カ変動詞の未然形連用形、サ変動詞の連用形、上一段・下一段活用の未然形(または連用形)にも付くようになる。

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大辞林 第三版の解説

べい

( 助動 )
〔助動詞「べし」の連体形「べき」の音便の形〕 接続のしかたおよび意味は助動詞「べし」に同じ。 「命こそかなひがたかべいものなめれ/源氏 澪標」 「今行く末はあべいやうもなし/更級」
が文末に用いられ、終助詞的になったもの。中世後期以降の用法。近世東国語では「べえ」とも〕
推量の意を表す。…だろう。 「其もありつべいぞ/史記抄 5」 「今日は川越が有るべいに/雑兵物語」 「お前がたの様な江戸衆にやあ何をいつてもわらわれべえと思つて/洒落本・道中粋語録」
話し手の意志を表す。…しよう。 「雁でござる。うるべいか/狂言・雁盗人」 「いまの銭で蕎麦でも喰ふべい/滑稽本・膝栗毛 2」 「語るべえと思ふ事もかたられねえちやあ/洒落本・道中粋語録」
相手の動作を勧誘する意を表す。 「さあ〱、どいつでも出やあがれ。あかるい所で勝負しべい/滑稽本・浮世風呂 4」 〔 (1) 「べし」の連体形「べき」の音便の形として、「べい」は中古の会話文などから見られる。 (2)
は中世後期以降の用法で、東国語として多く用いられるようになる。特に、近世においては東国方言の特徴ある言い方とされ、「べいべい言葉」「関東べい」などとも呼ばれる。 (3) 近世後期の東国方言において、「べい」の接続は、四段活用には終止形、上一段・下一段活用には未然形に付く。カ変には「こ」「き」または「く」、サ変には「し」または「す」に付く。 (4)
は、現代でも、関東方言または東北方言などで用いられる〕

べい

( 副助 )
〔「ばかり」の転。「べえ」とも。近世江戸の俗語〕
数量を表す語に付いて、おおよその分量・程度を表す。ほど。くらい。 「なんでも金なら五十両-のかさだが/洒落本・呼子鳥」
名詞に付いて、限定の意を表す。だけ。 「酒-食くらつてなまけるから、をさまらねえ/滑稽本・浮世風呂 4

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精選版 日本国語大辞典の解説

べい

〘名〙 (「あかんべい」の略) 指先で下まぶたを押しさげて、まぶたの裏の赤い部分を相手に見せる動作。相手をあざけったり、拒絶したりする意に用いる。また、そのときにいうことば。べかこう。
※随筆・嬉遊笑覧(1830)六下「否と云に目の皮を指にて引てベカともベイともいふ〈略〉〔半井卜養落髪千句〕くれもせぬ花一枝を所望してのぞいてみればべいか紅梅」

べい

〘副助〙
① 数量を表わす語に付き、およその分量・程度を示す。べえ
洒落本呼子鳥(1779)やました八景「なんでも金なら五十両べいのかさだが」
② 体言を受けて限定の意を表わす。べえ。
※洒落本・呼子鳥(1779)やました八景「ばかべいいわしゃる」

べい

〘助動〙 (助動詞「べし(可)」の連体形「べき」の音便形)
[一] 活用語の終止形に、ただしラ変型活用には連体形に付き、推量の意を表わす。
※蜻蛉(974頃)上「影もみえがたかべいことなど、まめやかにかなしうなりて」
※源氏(1001‐14頃)夕霧「本意ならぬことにて、尼になども思ひなり給ひなば、をこがましうもあべいかな、と思ふに」
[二] (「べえ」とも。(一)が文末に用いられることが多くなり、終助詞的になったもの)
① 推量の意を表わす。
※本福寺跡書(1560頃)大宮参詣に道幸〈略〉夢相之事「この舟はかただ舟候。御てにあまるべい」
② 話し手の意志を表わす。
※虎明本狂言・雁盗人(室町末‐近世初)「それはがんか、〈なまっていふ〉中中雁でござる、うるべひか」
※歌舞伎・傾城金秤目(1792)三番目「『ちょっと逢ってこべい』トのれん口へはいる」
③ 相手に命令する意志を表わす。
※仮名草子・身の鏡(1659)中「其おどり見たくなひ、其役者引こむべいなど、理発げに口にまかせてはき出す」
④ 相手を誘ってする意志を表わす。
※歌舞伎・御摂勧進帳(1773)三立「後(のち)にあふべい」
[語誌]連体形「べき」の音便として中古文、特に会話文に現われているが、中世以後、東国で、(二)のような文末終止の用法が次第に多くなった。これは「べいべい言葉」などとよばれて、東国(関東)方言を特徴づける一要素となった。

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