知恵蔵 「解雇ルール」の解説 解雇ルール これまで日本では、実定法上は期間の定めのない労働契約について解約の自由が規定されている(民法627条1項)にもかかわらず、裁判例は解雇が「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の乱用として無効となる」との解雇権乱用法理を確立し、解雇権を厳しく制約してきた。これは解雇をできる限り回避し、安定雇用を重視するという従来の日本型雇用システムを背景に形成されてきた。ただしこれはあくまで正規従業員に関する法理であり、有期雇用の非正規従業員については、契約期間満了による契約の自動終了が原則とされてきた。他方、長期雇用制度の維持のため、裁判例は労働契約の解釈上、労働条件の決定に関する使用者の裁量権を幅広く是認してきた。配転、出向、時間外労働などに関する包括的人事権・命令権の承認が典型である。言い換えると、日本の企業組織の対外的な弾力性は制限が厳しく硬直的でも、内部的弾力性は相対的に大きいといえる。2004年1月施行の労働基準法改正では、従来の判例法による解雇ルール(「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇権の行使は無効」)が明文化(第18条の2)された。 (桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2007年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報 Sponserd by