承認(読み)しょうにん(英語表記)recognition

精選版 日本国語大辞典 「承認」の意味・読み・例文・類語

しょう‐にん【承認】

〘名〙
① 正当であると認めること。一定事実を認めること。肯定意志を表示すること。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉四「人の己れを称して英才衆に超たりと云へるを聞くごとに、これを承認せずして曰く」 〔諧史〕
② ききいれること。承引。承諾
国会論(1888)〈中江兆民〉「租税を徴収せんとする時は必ず国会の承認(セウニン)を経ざるを得ず」
国家政府交戦団体などについて、その国際法上の地位・資格などを認めること。
日本国との平和条約(1952)一条連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する」

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デジタル大辞泉 「承認」の意味・読み・例文・類語

しょう‐にん【承認】

[名](スル)
そのことが正当または事実であると認めること。「相手所有権承認する」
よしとして、認め許すこと。聞き入れること。「知事承認を得て認可される」
国家・政府・交戦団体などの国際法上の地位を認めること。「国連承認された国」
[類語]受け入れる聞き入れる聞き届ける認める承諾受諾受け付ける心得る応じる承る承服黙認公認自認約諾快諾内諾甘受オーケー受容許可承知認める

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「承認」の意味・わかりやすい解説

承認
しょうにん
recognition

一般的には他人の行為に対して肯定的意志を表示すること。しかし、法律的には次のように使われている。

国際法上

承認には種々の態様があるが、代表的なのは国家承認、政府承認および交戦団体の承認である。

〔1〕国家承認 新国家が成立(合併、併合、分離独立等により)した場合、既存の個々の国家が新国家の国家性を認定し、もって新国家を国際団体に加入させ、国際法の主体として認める行為を国家承認という。(a)国家承認は一定の要件の下に行われる。第一に独立の政府が一定の領土および人民に対し実効的権力を確立していること、第二に国際法を遵守する意思と能力があることである。要件が充足されない状況下で承認を行えば、尚早の承認となり、実際はともかく理論的には無効というべく、本国より分離独立する場合には本国に対する干渉となり、違法とされている。(b)方式には、まず明示的承認と黙示的承認の別がある。前者は通告、宣言、条約等により承認の意思を明示することであり、後者は同盟条約など重要な二国間条約の締結、正式の外交関係の樹立等によって承認の意思が間接に推定されることである。さらに、法律上の承認と事実上の承認の別がある。前者は要件の充足を前提として行われるのに対し、後者は要件の充足に疑念がもたれる際に行われる暫定的承認であって(前者と異なり、撤回可能)、限定的実務関係をもたらすにすぎないことがある。(c)効果は、国家は事実上成立した段階で一定の重要な権利義務を享有すると考えられるが、承認によって承認国との間に一般国際法上の関係が全面的に形成される。しかし、承認が個別的に行われる結果、その効果は承認国と被承認国間のみにかかわり、その意味で相対的である。

〔2〕政府承認 一国内で政府が革命やクーデターにより非合法的に交替する場合に、新政府に旧政府にかわって当該国を代表する資格を認める行為を政府承認という。政府が非合法的に変革しても、領土および人民は依然新政府の基礎をなすので、国家としては同一性を保つというのが伝統的国際法の立場である。(a)要件は、第一に新政府が領域一般および住民に対し実効的支配を確立していること、第二に新政府が国家を代表する意思と能力があること、とくに旧政府の条約上の権利義務を継承することである。(b)方式は国家承認の場合と変わらない。(c)効果は、被承認政府が承認国との関係で国家を正式に代表する資格を認められることである。また、被承認政府との間に一般国際法上の関係がもたらされ、革命またはクーデターによって適用停止状態に置かれた旧政府締結条約も承認に伴い効力を復活する。

〔3〕交戦団体の承認 反乱団体が一国から分離しまたは一国の政府を転覆する目的をもって一定の地域を占拠し、地方的事実上の政府を樹立するまでに内乱が拡大した段階で、第三国または正統政府が当該反乱団体に一定の国際法主体としての地位を認める行為。その場合、第三国は自国民の権益保護のために、正統政府は内乱の残虐化防止のために交戦団体の承認を行うことが多い。(a)要件は、反乱団体が一定地域を実効的に占拠し、地方的政府を樹立していること、反乱団体が戦争法規を遵守する意思と能力があること。第三国が行う場合には、単なる同情や激励でなく承認が自国の権益保護など必要な関係にあることである。(b)方式は明示的にも行われるが、第三国は中立宣言により、正統政府は交戦法規の適用により黙示的に行うことが少なくない。(c)効果は、第三国が行う場合には正統政府および交戦団体双方に対し中立義務を負う。他方で、交戦団体は第三国の権益保護義務を負う。正統政府が行う場合には、交戦団体との間に交戦法規が適用され、正統政府は第三国の権益保護の責任から免れる。

[内田久司]

公法上

国・地方公共団体の機関が、一定の行為を行うについて、他の権限ある機関から与えられる同意に承認または承諾の語が用いられる。

〔1〕天皇が国事行為を行うにあたっては、内閣の助言と承認がなければならず(憲法7条)、これがなければ、天皇は行為をできない。条約に対する国会の承認(憲法73条3項)は条約の成立要件である。

〔2〕内閣総理大臣による緊急事態の布告には国会の承認が必要である(警察法74条)などがある。

[高橋康之・野澤正充]

私法上

一定の事実を認めること。時効中断事由としての債務の承認(民法147条3項・156条)、嫡出子の承認(同法776条)などのように単なる「観念の通知」である場合が多い。つまり、一定の事実を認めることにより、法が一定の効果を付与する(時効の中断、嫡出を否認する権利の喪失など)ものである。

 しかし、相続の承認(同法915条以下)は、家庭裁判所に対する申述(しんじゅつ)という方法を伴う法律行為である。

[高橋康之・野澤正充]

『田畑茂二郎著『国際法における承認の理論』(『法律学体系 第2部 法学理論篇13』所収・1955・日本評論社)』『広瀬善男著『国家・政府の承認と内戦』上下(2005・信山社)』

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世界大百科事典 第2版 「承認」の意味・わかりやすい解説

しょうにん【承認】


[私法,公法上の承認]
 (1)私法上は,一定の事実を認めることをいう。意思表示ではなく,〈観念の通知〉の意味で用いられることが多い。例えば,時効の中断事由としての承認(民法147条3号)は,時効が完成すれば義務を免れることになる義務者の側から権利者に対して一定の事実の認識を表示することであり,また,嫡出子たることの承認(776条)は,子が嫡出子である事実を認めることであって,いずれも〈観念の通知〉である。

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普及版 字通 「承認」の読み・字形・画数・意味

【承認】しようにん

認める。

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