知恵蔵 「言語ゲーム」の解説 言語ゲーム 言語哲学者ウィトゲンシュタインの用語。彼は言語を、「命令する」「演劇をする」「ジョークを作って話す」などの、もろもろの活動に織り合わされたものとして考察した。このような言語を伴った諸活動が、言語ゲームと呼ばれる(『哲学探究』〈1953年〉)。そこには「言語に先立って個人の内的感覚や客観的事実があらかじめ存在しており、言語はそれを写し取る道具である」とする古典的な言語観を解体しようとする意図がある。言語が客観的事実を描写するとしても、それは単に事態を写すのではなく、例えば火事を知らせる場合のように、自己や他者に対するなんらかの活動なのである。第2に、言語による表現は、人々の間に共有されたルールにもとづくものとされる。個人の内的感覚でさえも、そうしたルールにもとづいてはじめて表現され理解されうる。第3に、ルールはたまたま成立している慣習的なものにすぎず、絶対のルールなど存在しないとされる。例えば真偽を判断する際も、なんらかの慣習的なルールにもとづいて行われる以外になく、絶対的な判断基準などは存在しない。こうして言語ゲームの考え方は、相対主義的なニュアンスを強く帯びることになった。現在では言語ゲームは、社会学上の用語としても広く用いられている。例えば、学校や家庭やもろもろの宗教などを、それぞれ異なったルールをもつ言語ゲームと見なし、それぞれの特質を分析することができるからである。 (西研 哲学者 / 2007年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報