改訂新版 世界大百科事典 「証書真否確認の訴え」の意味・わかりやすい解説
証書真否確認の訴え (しょうしょしんぴかくにんのうったえ)
書面が,作成者と主張されている者の意思に基づいて作成されたかどうかを確定する訴えをいう(民事訴訟法134条)。たとえば,Bから貸金の返還を迫られているAは,そのような金を借りた覚えはなく,Bが所持しているAB間の消費貸借契約書はAの意思によって作成されたものではないと主張して,AB間に紛争が生じているとしよう。このような場合に,Bが貸金返還の訴えを提起したり,Aが債務不存在確認の訴えを提起することは,もちろんできるし,むしろそれが普通であるが,Aが消費貸借契約書がみずからの意思で作成されたものでないこと(Bが訴えるときはその逆)の確認を求めることもできる。証書真否の確認は,権利または法律関係ではなく事実の確認であるが,それが紛争の根源である以上,とくに〈確認の利益〉が認められている場合である。したがって,その証書の真否をテーマにして訴訟をするだけの具体的必要性がなければならないし,確認の対象となりうるのは,その記載内容から当事者の法律関係が直接証明される書面(たとえば,契約書,遺言証書,譲渡証書,定款,等)でなければならない。
執筆者:井上 治典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報