改訂新版 世界大百科事典 「買売婚」の意味・わかりやすい解説
買売婚 (ばいばいこん)
mǎi mài hūn
旧中国において,金銭契約によって妻を得る婚姻形式。正規の手続をふんだ婚姻にも〈納采〉(結納)の儀があり,新婦側に各種の金品を贈って聘礼(へいれい)とした。後世でも専業の媒人によって男女両家に縁談が進められると,両家の折衝によって〈身価銀〉〈礼金〉の額が決まり,新婦方に贈与する。もっと露骨で直接的な買売婚としては〈典妻〉〈租妻〉の風習が主として浙江省東部その他の地方に行われた。貧困の夫婦があって生計が維持できない場合,別の男子と契約して一定年限のあいだ妻を質に入れ,本夫は毎年所定の金額を受け取る。婚礼も挙げるから半公然の重婚となる。もしその期間に子女を出産すれば第2の夫の子となる。両家の往来交際も自由である。また広東地方の一部では,夫が外地に出稼ぎに出る場合,妻を他人に入質し,帰郷後に所定の金額を払って妻を請け出す例もあった。このほか侍妾を納(い)れる場合も金銭によって女性を買うので,やはり買売婚の性格をもっている。
→花嫁代償
執筆者:沢田 瑞穂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報