朝日日本歴史人物事典 「賢宝」の解説
賢宝
生年:正慶2/元弘3(1333)
南北朝時代の真言宗の僧。東寺の密教哲学研究を完成させた逸材。東寺の杲宝のもとで出家し,延文4/正平14(1359)年10月,伝法灌頂を受けた。その後は,杲宝および杲宝の師頼宝が未完のまま残した密教哲学の研究に邁進。生涯をかけてこれを完成に導き,政治の醍醐寺に対して,教学の東寺とも称すべき一時代を築いた。希代の学僧といわれ,頼宝,杲宝のあとを引き継いで完成に43年間を費やした『大日経疏演奥鈔』は,現在でも『大日経疏』研究の指針となるほど評価が高い。死の直前まで,本書の校閲に余念がなかったと伝えられる。著書100部以上。弟子に宗海,仁重など。<参考文献>櫛田良洪『続真言密教成立過程の研究』,橋本初子「杲宝と賢宝」(『中世寺院史の研究』下)
(正木晃)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報