日本大百科全書(ニッポニカ) 「跳躍距離」の意味・わかりやすい解説
跳躍距離
ちょうやくきょり
skip distance
送信点からの電波を受信する場合に、この距離以下には電離層からの反射波が到達しない距離。上空に向けて発射した電波が電離層で反射されてふたたび地上に戻ってくるための条件は、使用周波数、電離層の電子密度の分布、および電波の電離層への入射角(天頂方向と電波の進行方向とのなす角)によって決まる。たとえば、小さい入射角の電波が電離層を突き抜けるような関係にある周波数と電子密度を仮定する。この場合、電波の入射角をしだいに大きくしていくとき、ある入射角以上になると電波は反射して地上で受信されるようになる。すなわち送信点からある距離以内には電離層からの反射波は届かない。この距離を跳躍距離という。跳躍距離は電離層条件を一定としたとき電波の周波数が低いほど短く、周波数を一定としたとき電離層の電子密度が大きいほど短い。実際には電離層の変動とともに跳躍距離も変化し、それに伴って跳躍距離近傍での短波帯の通信や放送波の受信は非常に不安定になる。
一般的には跳躍距離を短くすることが、通信では通信可能地域、放送ではサービスエリアの拡大につながる。しかし個々の短波回線の設計にあたっては、この跳躍距離を考慮して、送受信局の配置、周波数、アンテナ特性などを定める必要がある。また、送信点からの地表波が十分弱まった距離から跳躍距離までの間は、電波が受信されない地域となる。これを不感地帯(サイレントゾーン)という。
[若井 登]