軟産道強靭(読み)なんさんどうきょうじん(英語表記)Rigidity of the soft birth canal

六訂版 家庭医学大全科 「軟産道強靭」の解説

軟産道強靭
なんさんどうきょうじん
Rigidity of the soft birth canal
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 分娩の際、子宮頸部(けいぶ)、腟、会陰(えいん)伸展、拡張し軟産道を形成します。分娩の進行とともに、胎児は下降し、それに伴って、これらの組織は次第に軟化し、伸展性が高まっていきます。このような軟産道の成熟過程が順調に進まないために、分娩の進行が妨げられる場合を、軟産道強靭と呼んでいます。

原因は何か

 子宮の奇形や外傷性の瘢痕(はんこん)が原因になることもありますが、年齢的因子体質が関係する場合が多いと考えられています。

症状の現れ方

 十分強いと思われる陣痛に加え、狭骨盤(きょうこつばん)や児頭骨盤不均衡などの骨産道(こつさんどう)の異常がなく、また回旋異常などの他の分娩の進行を妨げる因子が存在していないのに分娩の進行が止まるか非常にゆっくりになった場合に、軟産道強靭の可能性が考えられます。

検査と診断

 内診により、軟産道の伸展性を評価します。

治療の方法

 産道は時間とともに軟化することが多いので、母子の状態を評価して、もう少し待てるかどうかを検討します。

 待てる場合は、母体の緊張をとるように指導するとともに、必要に応じて睡眠薬などを用います。

 これ以上待てない場合は、経腟分娩をあきらめ、帝王切開術が選択される場合もあります。

海野 信也

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「軟産道強靭」の解説

なんさんどうきょうじん【軟産道強靱 Soft Birth Canal Dystocia】

[どんな病気か]
 子宮の下部(子宮峡部(きょうぶ))、子宮頸管けいかん)(子宮の出口)、腟(ちつ)、会陰(えいん)からなる胎児の通過路を軟産道といいます。
 陣痛が始まったら、軟産道もやわらかくなり、お産が順調に進むのが望ましい状態です。
 しかし、初産婦(しょさんぷ)、とくに年齢の高い初産婦の場合、軟産道がかたくて広がりにくく、分娩(ぶんべん)がなかなか進行しないことがあります。このような状態を、軟産道強靱といいます。
[治療]
 腟や会陰部のみがかたい場合には、会陰切開(えいんせっかい)を行なっただけでお産できることが多いものですが、子宮口(しきゅうこう)を切開する処置が必要となることもあります。
 また、分娩が長びいて胎児(たいじ)の具合が悪くなったり、妊婦が極度に疲労した場合には、吸引(きゅういん)分娩や鉗子(かんし)分娩、ときには、帝王切開(ていおうせっかい)(「特殊な分娩」の帝王切開術)が行なわれることもあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

妊娠・子育て用語辞典 「軟産道強靭」の解説

なんさんどうきょうじん【軟産道強靭】

子宮口がかたくてなかなか開かなかったり、腟がかたくてお産がなかなか進まない場合をいいます。子宮口がかたいときは、子宮頸管をやわらかくする薬や、子宮口を広げる管を用いることもあります。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の軟産道強靭の言及

【異常分娩】より

…陣痛開始後で,子宮口が全部開く前に破水するものを早期破水というが,今日ではほとんど心配ないとされている。
[軟産道強靱rigidity of soft birth canal]
 子宮口や膣などの胎児が通過する部位が硬くて,陣痛があっても容易に開かない場合をいう。35歳以上で初めてお産するものを高年初産婦とよぶが,この軟産道強靱の頻度が高い。…

【出産】より

…子宮頸管を中心とする軟産道は妊娠中の生化学的物理的変化により軟化し,分娩時に容易に開大する。しかし高年初産婦など,頸管が軟化せず分娩第1期が遷延する場合を軟産道強靱という。軟化の促進にはプロスタグランジン,エストリオールが用いられる。…

※「軟産道強靭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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