翻訳|forceps
手術その他の外科的処置に用いられる器具の総称。鉗子とは挟むものの意味で,はさみに似て,手元の開閉に従って先端も開閉する形になっているが,刃はついておらず,代りにものを挟むのに適した形になっている。組織を挟んで固定したり,引っ張ったり,圧迫して血液や内容物を遮断したり,組織をつぶしたりするのに用いる。用いる目的や部位に適するように,いろいろな形態の鉗子が考案されており,200種に及ぶ。個々の名称には,用いる臓器名(たとえば骨鉗子,気管鉗子,胃鉗子など),考案者名(コッヘル鉗子,ペアン鉗子,ミュゾー鉗子,キリアン鉗子など),目的(止血鉗子,把持鉗子,圧挫鉗子や鉗子分娩(ぶんべん)に使用する胎児鉗子など),鉗子そのものの形態(モスキート鉗子,ワニ口鉗子,麦粒鉗子など)が冠せられている。
執筆者:小野 美貴子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
組織を挟んで把握する手術器具で、挟む組織やその目的に応じて種々の形や大きさのものがある。鉤(かぎ)や彎曲(わんきょく)の有無をはじめ、滑脱防止用の溝の有無などによる別がある。腹部外科や胸部外科でもっとも多く使われるのは止血鉗子で、腹腔(ふくくう)や胸腔内の柔らかくて弱い組織を傷つけないためには先端に鉤のないペアン鉗子が使われ、皮下などの強い組織には鉤のある把持力の強いコッヘル鉗子があり、この2種が代表的なものである。彎曲して先端が小さくなっているケリー鉗子は、深部の止血をはじめ軟組織の把持牽引(けんいん)や剥離(はくり)など、利用範囲が広い。それぞれ長短や彎曲度の違いなどによって使い分けられる。臓器別に、肺鉗子、腹膜鉗子、血管鉗子、腸鉗子、骨鉗子などにも分けられ、目的によっては、剥離鉗子、結石鉗子、痔核(じかく)鉗子などの別もある。なお、耳鼻科、口腔外科、泌尿器科、産婦人科、整形外科、形成外科などでも、それぞれの目的に応じた鉗子が使われている。
[岡島邦雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…端脚類の顎脚やシャコ類の第2胸肢(捕脚raptorial leg),カマキリ類の第1歩脚は,末端節が次節の内縁とかみ合うようになった擬鉗状になっている。ハサミムシ類の尾端の尾鋏forcepsは尾葉が変化したものである。はさみは捕食,防御のほか,体表の掃除,卵の世話,巣穴造りなどいろいろな目的のために用いられている。…
…鉗子という篦(へら)状の器械で胎児の頭部を挟み,牽引して胎児を速やかに娩出させる人工分娩法。鉗子分娩が行われるのは通常,分娩の進行が停止し,胎児が弱ってきて(胎児仮死),速く産ませないと危険な場合である。…
※「鉗子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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