軽太子軽大郎女(読み)かるのみこかるのおおいらつめ

改訂新版 世界大百科事典 「軽太子軽大郎女」の意味・わかりやすい解説

軽太子・軽大郎女 (かるのみこかるのおおいらつめ)

記紀の允恭(いんぎよう)天皇条に兄妹で相姦したと伝えられる皇子皇女。《古事記》によれば,允恭天皇の死後即位予定者である軽太子が同母妹軽大郎女と通じたため,天下人心は軽太子を離れて弟の穴穂(あなほ)皇子になびいた。両皇子とも兵をおこし一戦におよぶが,軽太子は捕らえられて伊予の湯(道後温泉)に流される。そのさい,この兄妹は〈天飛ぶ鳥も使ぞ鶴(たづ)が音(ね)の聞えむ時は我が名問はさね〉〈夏草のあひねの浜の蠣(かき)貝に足踏ますなあかして通れ〉と歌い交わした。のちに妹は恋しさにたえられず兄の後を追い,流刑地でともども自殺したという。兄妹相姦は人類史に普遍的な禁忌だが日本古代においても同様で,以上の物語はその禁忌の説話化とみなされる。王権にとってそれが重大事とされていたことは,物語中にみえる多くの歌謡が上記の由緒とともに宮廷で伝承された事実により裏書きされる。なお《日本書紀》には軽大郎女の方が流されるなど細部に若干の相違がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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