日本大百科全書(ニッポニカ) 「輪栽式農業」の意味・わかりやすい解説
輪栽式農業
りんさいしきのうぎょう
農業における土地利用方式の一種。輪栽式農業は、ヨーロッパで大規模な囲い込みによって農村共同体が崩壊したのちに、改良三圃式(さんぽしき)農業や穀草式農業から発展したものである。この農業経営方式の原型は、イギリスのノーフォーク地方に始まったノーフォーク輪栽式農業である。それは、圃場を四区に分割し、耨耕(じょっこう)作物、夏禾穀(かこく)作物、クローバー、冬禾穀作物の順序で輪作する経営方式である。ここに、休閑ないし休閑作物方式の廃止と地目交替にかわる禾穀作物と禾穀作物以外の簇葉(そうよう)作物との作物交替が行われ、耨耕作物と豆科作物が耕地に導入される。改良三圃式農業の場合は禾穀作物と禾穀作物以外の作物の作付け割合は二対一であったが、輪栽式農業ではその割合は一対一になり、禾穀作物の生産力の増進と禾穀作物以外の作物の価値が高まることが輪栽式農業成立の前提条件になる。輪栽式農業は、一方で飼料基盤を拡大し、家畜の舎飼いによる家畜生産力を高め、他方で家畜の飼養による厩肥(きゅうひ)の利用増加が作物生産力を高めることによって、家畜と作物の生産力を並行的に増進させる経営方式である。このように、輪栽式農業は、技術的には地力の維持・増進、作物と家畜の生産力の並行的増進、経営経済的には労働の配分、危険の分散などの長所があり、ヨーロッパでは合理的な経営方式であるといわれ、近代的農業の範となった。日本では、元来、土地と家畜とが結び付かなかったため、正常な輪栽式農業は行われなかった。今日では、水田と畑を輪換する田畑輪換方式が水田転作との関係で注目されている。
[四方康行]