朝日日本歴史人物事典 「近江屋長兵衛」の解説
近江屋長兵衛
生年:寛延3(1750)
江戸中期の薬種商人。大阪道修町の武田薬品工業の創始者。大和国広瀬郡薬井村(奈良県河合町薬井)で竹田徳兵衛の次男として生まれた。幼名は長三郎といい,のちに道修町の薬種仲買商の近江屋嘉助方に丁稚奉公に出た。その後別宅を許され,天明1(1781)年には暖簾分けを受け,近江屋を屋号として独立開業。主家の近江屋は近江日野の出身であった。2代長兵衛は初代の次男として寛政1(1789)年に生まれ,文化・文政期の景気高揚期に経営を拡大し,金融業務や廻船業務にまで多角化した。4代長兵衛のとき明治維新を迎え,和漢薬のほかに西洋薬の輸入や製薬所の開設など,近代経営を軌道に乗せた。明治2(1869)年に武田と改姓し,武田長兵衛を名乗った。5代長兵衛(和敬)は実弟武田二郎(東京帝大卒)の協力を得て第1次大戦期に医薬品の国産化に成功し,「道修町の御三家」の雄といわれる基礎を築いた。大正14(1925)年株式会社武田長兵衛商店に改組,昭和18(1943)年武田薬品工業の発足とともに和敬の長男鋭太郎が6代長兵衛を襲名,社長に就任した。
(作道洋太郎)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報