追い貸し(読み)おいがし(その他表記)forbearance lending

日本大百科全書(ニッポニカ) 「追い貸し」の意味・わかりやすい解説

追い貸し
おいがし
forbearance lending

元本返済や金利返済の滞っている債権が会計上、不良債権にみえないように、銀行などの金融機関が既存債権の返済原資を追加的に融資する行為。金利が返せなくなった企業に、金利返済にあてる資金を追加融資する場合が多い。追い貸しが発生すると、収益性の低い非効率な企業が市場から淘汰(とうた)されずに生き残り、不良債権の処理が進まず、健全な経済活動が金融面から阻害されるといわれる。

 1990年代にバブル経済が崩壊して以降、銀行などの金融機関は膨大な不良債権を短期間に処理できず、破綻(はたん)懸念のある企業などに追い貸しする例が増えた。同時に1993年(平成5)から適用されたバーゼル合意により、銀行などは経営健全性の目安である自己資本比率の向上を迫られ、健全な貸出先への融資を絞り込む貸し渋りクレジット・クランチ)が起きた。この追い貸しとクレジット・クランチの結果、健全企業へ資金が回らず、破綻懸念のある企業が淘汰されない悪循環に陥り、これが日本経済がほとんど成長しなかった「失われた十年」の一因になったとの見方がある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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