日本大百科全書(ニッポニカ) 「退職給付引当金」の意味・わかりやすい解説
退職給付引当金
たいしょくきゅうふひきあてきん
liability for employee benefits
企業が従業員に対して将来支払う退職金や企業年金を見積もって、負債として計上する引当金。この退職金や企業年金を退職給付といい、この支払義務を退職給付債務という。退職給付引当金は、退職給付のうち期末時点までに発生していると認められるものをいい、長期債券の利回りなどを基礎として割引計算により測定して計上される。会計処理は、将来の退職給付のうち当期の負担に属する額を当期の費用として引当金に繰り入れ、この引当金の残高を貸借対照表の負債の部に計上する(1998年企業会計基準委員会公表の「退職給付に係る会計基準」より)。
退職給付に係る会計基準が公表されるまでは、退職給与引当金として、企業が直接給付する部分についてしか計上されていなかったが、新しい会計基準により企業年金制度を含めた包括的な会計処理が定められた。したがって、退職給付引当金は、割引率等を合理的に設定し、将来の退職給付債務を見積もり、そこから年金資産の額等を控除した額となる。
[中村義人 2022年11月17日]
『井上雅彦著『退職給付会計実務の手引き』第2版(2018・税務経理協会)』▽『EY新日本有限責任監査法人編『現場の疑問に答える会計シリーズ5 Q&A 退職給付の会計実務』(2019・中央経済社)』▽『有限責任監査法人トーマツ編『退職給付会計の経理入門』第2版(2020・中央経済社)』