進行性筋ジストロフィー症 (しんこうせいきんジストロフィーしょう)
progressive muscular dystrophy
遺伝性の原発的な骨格筋の障害であり,進行性の筋脱力と筋組織の変性を主徴とする疾患の総称である。有病率は10万人中2.6~5.5人である。多くの病型があるが,代表的なものは,(1)デュシェンヌ型,(2)ベッカー型,(3)先天型,(4)肢帯型,(5)顔面肩甲上腕型,(6)眼筋型,(7)遠位型などである。それぞれ特徴的な臨床症状のほか,血清CPK値,筋電図,筋組織像などを参考にして診断する。このとき,病型のみならず遺伝型式や保因者についても検索し,遺伝相談を行うことが望ましい。とくに伴性劣性遺伝の(1)では重要である。現在多くの病型の原因遺伝子は判明したが,発症機序はまだ不明であり,本質的な治療法はなく対症療法のみ可能である。予後は各病型で異なり,(1)(3)はきわめて不良であるが,(2)(4)(5)(6)(7)はさほどではない。したがって各疾患に応じた生活指導が必要である。
執筆者:水沢 英洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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進行性筋ジストロフィー症【しんこうせいきんジストロフィーしょう】
進行性筋異栄養症ともいう。骨格筋が変性し,筋力が低下し,進行性に筋萎縮がみられる遺伝性疾患。遺伝様式,発症年齢,経過などから先天型,仮性肥大型,肢帯型,顔面肩甲上腕型,末梢型などに分類される。血中,尿中のクレアチンが増し,クレアチニンが減少する現象や,筋肉の生検,筋電図により診断。有効な治療法はない。
→関連項目巨大結腸症
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出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の進行性筋ジストロフィー症の言及
【運動麻痺】より
…このような痙性四肢麻痺はまた大脳の広範な病変によっても生ずるが,そのような場合には,単に運動麻痺のみでなく,知能や意識の障害,視覚・聴覚の障害,痙攣(けいれん)発作などを伴うのが普通である。[多発性筋炎]や[進行性筋ジストロフィー症]のような全身を侵す筋肉疾患,[ギラン=バレー症候群]のような多発性根神経炎,[運動ニューロン疾患]などでは,弛緩性の四肢麻痺を呈することが多い。これらの疾患,とくに後2者においては,顔面筋やその他の脳神経系の運動麻痺をきたすことも少なくない。…
【筋萎縮】より
…骨折などを生じたためにギプス固定をしていた後に固定していた部分の筋肉が萎縮したり,いろいろな病気で臥床安静を保たなければならなかったときに,下肢の筋肉が萎縮して細くなり立ったり歩いたりするときの力が弱まってしまったりするようなことは,日常よく経験されることである。
[筋原性筋萎縮]
筋原性筋萎縮では,横紋筋細胞がこわされるために筋繊維が少なくなると同時に個々の筋繊維も細くなるが,原因として重要なものは,多発性筋炎,進行性筋ジストロフィー症である。このほか,アルコールや,クロロキンなどの薬物中毒,甲状腺機能亢進症,低カリウム血症,副腎皮質ホルモンの投与などでも筋原性筋萎縮が生ずる。…
※「進行性筋ジストロフィー症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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