結婚や妊娠・出産に際して遺伝病や先天異常について相談に応じたり説明すること。これらの問題に対して具体的な心配を抱いている人は少なくない。たとえば,いとこどうしで結婚しようとする場合や,おじ,めいなど近親者に先天異常患者がいる場合,あるいはすでに出産した子どもに先天異常があった場合などである。このような問題をもった個人または個々の家族に対し,訓練を受けた臨床遺伝学の専門の医師が,その専門的知識を背景として,遺伝病や先天異常の起こりうる可能性(その結婚,妊娠によって出産する児の何%くらいが問題の疾患に罹患しうるかなど)を説明し,相談に応じている。日本で遺伝相談が普及しはじめたのは1970年代に入ってからであるが,欧米では第2次世界大戦前後からの歴史をもつ。現在日本でなんらかの形で遺伝相談に応じることのできる施設は100近い。しかし遺伝性疾患や先天異常の種類が複雑多岐にわたるため,一つの施設ですべての疾患の相談には応じられない。そこで,日本人類遺伝学会や厚生省研究班の手で,施設間の連携ネットワークづくりが進められている。
遺伝相談は,国家を主体とした優生政策とは本質的に異なるものである。優生政策は,優秀なものの結婚や産児を政策として奨励するもので,極端な例としてナチス・ドイツが挙げられる。一方,遺伝相談は,あくまで医療の場における個人または個々の家族への遺伝医療サービスの一環として行われるものである。したがって遺伝相談の結果としての産む,産まぬの選択は,あくまで個人または個々の家族にゆだねられる。遺伝相談が広く普及し,その結果社会全体として先天異常の発生が防止できるかもしれないが,これはあくまで遺伝相談の二次的な目的である。
→先天性代謝異常
執筆者:佐藤 孝道
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…近年発展した診断法にヘテロ保因者診断法と新生児マススクリーニング法がある。前者は,劣性遺伝子の保因者を検出するもので,優生学的見地から重要であり,羊水診断法とともに遺伝相談に活用されるが,まだ診断可能な疾患が少ないことが難点である。後者は,早期診断・早期治療開始の原則に沿って新生児の血液をろ紙に採取し,有効な治療法の確立している数疾患を集団的に診断する方法である。…
…したがって,それらが羊水診断の可能な疾患である場合には,胎児の状態について正確な情報を得ることができる意義は多大である。遺伝相談を行ううえで重要な武器となっている。【中村 了正】。…
※「遺伝相談」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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