日本大百科全書(ニッポニカ) 「運のいいハンス」の意味・わかりやすい解説
運のいいハンス
うんのいいはんす
Hans im Glück
『グリム童話集』(第83番)の話。7年間忠実に仕えたハンスが、主人から頭ほどの大きさの金の塊をもらって、帰路につく。重くなったところへ馬に乗った騎士に出会い、馬と交換。しかしやがて馬に投げ出され、百姓の雌牛と交換。乳を搾ろうとしても出ず、逆にけ飛ばされたので肉屋の子豚と交換。よく肥えたガチョウを抱えた男に、村長の豚の子が盗まれて、捜索中だから危いといわれ、ガチョウと交換。鋏(はさみ)研ぎに出会い、手仕事は金もうけになると聞いて、砥石(といし)およびただの重い石と交換。井戸のへりに置いて水を飲もうとしたとき、思わず石が井戸へ落ちると、神様が自分を石の重荷から解放してくれた、と感謝する。ほとんど全ヨーロッパに分布する話である。日本の『わらしべ長者』は逆に、小さい物からしだいに価値ある物へと交換を続けていく。
[小澤俊夫]
『金田鬼一訳『グリム童話集3』(岩波文庫)』