肉屋(読み)ニクヤ(その他表記)butcher

翻訳|butcher

デジタル大辞泉 「肉屋」の意味・読み・例文・類語

にく‐や【肉屋】

肉を売る店。肉店。

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精選版 日本国語大辞典 「肉屋」の意味・読み・例文・類語

にく‐や【肉屋】

  1. 〘 名詞 〙 肉を売る店。特に、鳥、牛、豚などの肉を商う家や人。また、その料理店
    1. [初出の実例]「その父は屠者(〈注〉ニクヤ)及び牧人にして」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「肉屋」の意味・わかりやすい解説

肉屋 (にくや)
butcher

ヨーロッパの食生活において肉食はきわめて高い割合を占めていたので,保存の困難な食肉の供給を円滑にするという点で,肉屋の社会生活に占める位置は重要であった。そのためヨーロッパの肉屋は中世の早い時期から強固な同業組合を形成し,その営業について細部にわたる規則をつくり,権力者の承認を求めてきた。この場合,肉屋は家畜の調達,屠殺,精肉の調製,食肉販売のすべての過程を担当していた。中世でも都市専属の屠殺夫が存在した場合もあるが,一般的にいって屠殺が独立した業種となるのは,19世紀の大都市に大規模な屠殺場が造られてからであった。19世紀初頭の大都市ですら,肉屋が店先中庭でまだ屠殺を行っているのが見られた。したがって,肉屋といえば食肉小売業のことを指すようになったのは,大規模な屠殺場の設置以後のことである。

 中世ヨーロッパの肉屋の同業組合の存在が史料によって確かめられるのは12世紀初頭からである。パリについていえば,1146年の成立が最も早い場合で,82年にフィリップ2世(オーギュスト)がこれに強力な特権を与えている。肉屋の同業組合は,その構成員たる親方が肉を販売するのに使用する肉屋台の数を制限し,さらに親方の世襲を定めることで,競争を排して食肉販売の独占を確保した。しかし親方に後継者がいない場合,他の親方がその肉屋台を買い取るということが行われ,同業組合は有力な数家族が支配するようになっていく。このような段階で都市の政治を左右するような力を発揮した事例もある。例えば15世紀初頭のパリの場合,百年戦争で侵入したイギリス軍と結んだブルゴーニュ派を,パリの肉屋の同業組合が支持し,1410年から13年にかけて首都を支配した。このとき,皮剝ぎ人のカボシュによって引き起こされたのが,いわゆるカボシュ一揆と呼ばれる反乱である。

 他方,どの都市でも市の当局者は消費者の保護や衛生の保持に意を注ぎ,さまざまな規制を行った。病気の家畜を見分けるための検査官を置き,腐敗した肉が売られて疫病が流行するという重大事を防がねばならなかった。肉の販売は塊を目分量で売るという習慣で,肉屋はこの習慣に固執したため,量り売りが始まるのはドイツなどでも14世紀以降,パリなどでは1540年の布令以降のことである。

 なお中世では肉屋が郵便配送を兼業していた場合がある。これはとくにドイツの諸地方で多く見られた。肉屋は家畜を集荷するために,定期的に都市から農村に赴いたから,こうした業務を引き受けることができたのである。

 なお,日本については〈ももんじ屋〉の項を参照されたい。
肉食
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肉屋」の意味・わかりやすい解説

肉屋
にくや

食用肉を売る店。江戸中期には、イノシシ、シカ、タヌキなどの肉を売ったり、食べさせる店ができ、ももんじ屋といっていた。獣肉、ことに牛肉の商品化は1859年(安政6)の開港からで、肉屋は外国人相手に開業した。また当時は牛鍋(ぎゅうなべ)屋を兼ねるのが普通だった。そのため1870年代には牛鍋屋も牛肉屋もともに肉屋とよばれた。20世紀になると、都市中心に牛肉・豚肉が家庭料理として広まり、販売専門の肉屋が増えた。

[遠藤元男]

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世界大百科事典(旧版)内の肉屋の言及

【屠殺】より

… 屠殺はこのほかの作業として,皮はぎ,内臓摘出などの過程をともなうから,屠殺人のほかに皮はぎ人,内臓屋,皮なめし人などの職業をも付随させていた。近代以前のヨーロッパでは,屠殺は肉の小売に従事する肉屋が同時に行うのが原則であったが,中世の肉屋の同業組合が強固な基盤を諸都市で築いた理由の一つは,こうした付随する職種の人々をも支配したことにあった。しかし中世の都市には十分な屠殺場はなく,肉屋が店先などで屠殺したりしていて,都市の当局者は衛生管理のうえでも大いに神経を使わねばならなかった。…

※「肉屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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