日本大百科全書(ニッポニカ) 「緊急通報用電話番号」の意味・わかりやすい解説
緊急通報用電話番号
きんきゅうつうほうようでんわばんごう
火災、災害、事件、事故、救急救助などを通報するための3桁(けた)の電話番号。緊急番号ともよばれる。国によって番号は異なり、日本では電気通信番号規則(平成9年郵政省令第82号)に基づき、警察機関への通報には110番、消防機関には119番、海上保安庁には118番が割り当てられている。なお、国際電気通信連合(ITU)は2012年、世界標準の緊急通報用電話番号として、193の加盟国・地域ですでに割り当てられた番号がない場合、911番(アメリカの緊急番号)か112番(おもにヨーロッパの緊急番号)を割り当てることで合意した。
日本では1926年(大正15)、初の緊急通報用電話番号として火災報知用の112番の運用が始まったが、かけ間違いが多く、翌1927年(昭和2)から119番に変わった。1948年(昭和23)には警察機関と消防機関の組織が分かれたため、消防機関の通報番号として119番、警察機関の番号として110番の利用が始まった。110番制度は、1948年の旧警察法施行を機に東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸の六大都市と逓信(ていしん)局のあった札幌と熊本で始まり、1960年までに全国に広がった。2000年(平成12)には、海上での事件・事故を海上保安庁へ緊急通報する118番の運用が始まった。緊急通報を扱う電気通信事業者は、(1)警察機関、海上保安庁、消防機関への接続、(2)発信者の位置情報の通知、(3)回線保留または呼び返し、の3機能をもつことが義務づけられている。従来のアナログ電話やIP電話は3機能を備えているが、携帯電話やスマートフォンを利用した場合、位置情報送信や回線保留は困難であった。このため総務省は2007年、携帯電話などのGPS(全地球測位システム)で測位された位置情報を電話番号とともに送信することを義務づけ、回線保留機能の代替として、折り返し電話をかける機能を新たに設けるよう義務づけた。2023年(令和5)からは、110番通報で、通報者が警察施設へ画像や映像を送信できる「映像通報システム」の運用が始まった。
緊急通報電話の通報件数は、2020年代では110番と119番が年間800万~900万件、118番が約40万件に達するが、緊急性に乏しい通報やかけ間違いが少なくない。警察庁は110番とは別に、近隣トラブルや悪質商法などの相談に応じる警察相談専用電話(電話番号#9110)を設け、事件・事故や人命救助など以外の場合には警察相談専用電話を利用するよう呼びかけている。警察相談専用電話は原則平日昼間に受け付け、通話料は利用者負担。
[矢野 武 2023年10月18日]