日本大百科全書(ニッポニカ) 「カメレオン液」の意味・わかりやすい解説
カメレオン液
かめれおんえき
chameleon solution
過マンガン酸カリウム水溶液の俗称。また、鉱物カメレオンともいう。マンガン酸イオンMnO42-の緑色溶液に対してスウェーデンのシェーレ(塩素、酸素の発見者として有名)が命名した。この緑色溶液を酸性にすると過マンガン酸イオンMnO4-の赤紫色溶液となり、この溶液に過剰のアルカリを加えると、ふたたびマンガン酸イオンの緑色溶液となることにちなんで名づけられた。過マンガン酸イオンとマンガン酸イオンの間の半電池反応と標準還元電位(標準酸化還元電位)は次のとおりである。
MnO4-+e-―→MnO42-
E°=+0.56V
一方、過マンガン酸イオンは酸性溶液中でマンガン(Ⅱ)まで還元される。その半電池反応と標準還元電位は次のとおりである。
MnO4-+8H++5e-―→Mn2++4H2O
E°=+1.51V
このように過マンガン酸イオンは強い酸化剤であり、濃い赤紫色を呈するが、有機物や還元性物質とあうとほとんど無色のマンガン(Ⅱ)溶液となる。このすばやく色が変化するさまがカメレオンの易変色性に類似するのでこの名があるとする説があるが、過マンガン酸イオンは中性ないしアルカリでは二酸化マンガンMnO2までしか還元されず、二酸化マンガンは褐色である。カメレオンが環境の変化によって赤や紫や青や緑に変わるということを考慮すると、過マンガン酸イオンとマンガン酸イオンの間で赤紫色から緑色に変化する、またその逆の現象をさすとするのが妥当であろう。現在は医学、薬学の分野で過マンガン酸塩の赤紫色溶液をカメレオン液とよぶことのほうが多い。
[成澤芳男]