遷移金属触媒(読み)センイキンゾクショクバイ

化学辞典 第2版 「遷移金属触媒」の解説

遷移金属触媒
センイキンゾクショクバイ
transition metal catalyst

遷移金属触媒作用を利用した触媒.遷移金属元素単体およびそれらの酸化物,塩化物,硫化物などの化合物は,それぞれ特異な触媒作用を示す物質が多く,触媒の中心となっている.その理由としては,これらの原子またはイオンはd電子殻が不完全充填であり,単体としてもd電子帯に空孔をもっているため,一般に水素,その他の反応分子を選択的に強く吸着することがあげられる.たとえば,ニッケル白金などは水素を容易に解離吸着し,アンモニア合成触媒として知られる鉄はさらに窒素をも解離吸着する.したがって,金属単体では不飽和化合物の水素化,脱水素に触媒作用を示し,化合物では酸化,異性化,重合などの反応を選択的に促進するものが知られている.これらの金属元素はエネルギー差の比較的小さい複数の酸化状態をもつため,たとえば酸化反応では酸素の供与体として有効にはたらくことが考えられる.また,周期表8~10族元素のイオンや,これらから合成される錯体は,液相における触媒として利用されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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