遺伝性球状赤血球症(読み)いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう(英語表記)hereditary spherocytosis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

遺伝性球状赤血球症
いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう
hereditary spherocytosis

HSと略す。赤血球が先天的に球形となり,浸透圧が低下するため溶血を起し (自己溶血現象) ,黄疸貧血脾腫などの症状を呈する遺伝性 (先天性) 溶血性貧血。遺伝形式は染色体性優性遺伝。脾臓摘出を行えば症状は軽くなる。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

遺伝性球状赤血球症
いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう
Hereditary spherocytosis
(子どもの病気)

どんな病気か

 正常では円盤状の形を保っている赤血球が、赤血球膜の異常のために球状に変形してしまうことにより本来の機能が低下し、壊れやすくなってしまう(溶血(ようけつ))病気です。

 日本で発見される先天性溶血性貧血(せんてんせいようけつせいひんけつ)のなかで最も頻度が高い疾患で、人口5~10万人に1人の頻度とされています。多くは遺伝性ですが、約30%は突然変異による弧発(こはつ)例です。

原因は何か

 赤血球膜の骨格をなす物質の遺伝的異常(バンド3やバンド4.2などの欠損)が原因であることが知られています。これらの蛋白質は赤血球の形態維持や変形機能に重要な役割を担っており、赤血球が壊れやすくなります。

症状の現れ方

 主要な症状は貧血、黄疸(おうだん)脾臓(ひぞう)の腫大(はれ)です。学童期以降は骨髄(こつずい)での赤血球産生の亢進により代償(だいしょう)されて貧血を認めないこともあります。とくに重要なこととして、伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)リンゴ病)の原因になるヒトパルボウイルスB19に感染すると、急激に著しい貧血(無形成発作(むけいせいほっさ)と呼ばれる)を生じることがありますので、リンゴ病の流行期には注意が必要です。

 赤血球が壊されると黄疸として現れます。約30%で新生児黄疸が強く現れ、光線療法が必要になることがあります。重症の新生児黄疸の場合には交換輸血が必要な場合もあります。また、過剰なビリルビンのため胆石が出来やすくなります。

 脾臓の腫大は乳幼児で50%、年長児で75~95%にみられます。かぜをひいた時(ほとんどはウイルス感染症)に、脾臓の機能が亢進し溶血が盛んになることがあります(溶血発作)。

検査と診断

 正球性正色素性貧血(せいきゅうせいせいしきそせいひんけつ)、赤血球の形態観察で球状赤血球、網状赤血球の増加、黄疸(間接ビリルビン上昇)、脾腫(ひしゅ)、赤血球の浸透圧抵抗(しんとうあつていこう)の低下などを総合して診断します。可能であれば、電気泳動により膜蛋白の異常を同定します。

 なお、新生児期には形態、浸透圧抵抗ともに典型的な所見(しょけん)をとらないことも多いため、診断が難しいことがあります。

治療の方法

 無形成発作による急激な貧血の悪化や、新生児期の重度貧血などには赤血球輸血が必要になります。

 赤血球は主に脾臓で壊されていますので、脾臓を摘出(脾摘(ひてき))すると諸症状が改善します。近年では、腹腔鏡による低侵襲(体を傷つける程度が低い)の脾臓摘出術が可能になっています。ただし、脾臓は免疫(めんえき)臓器の一部であり、とくに乳幼児期は脾摘後に重症細菌感染症(じゅうしょうさいきんかんせんしょう)(とくに肺炎球菌)にかかりやすくなるため、重症例(ヘモグロビン6~8g/㎗)でも6歳になるまで脾摘は待つほうが良いと思われます。ただし、頻回に輸血が必要な最重症例では、3歳以前でも脾摘を行うことがあります。

 軽症例では青年期まで待機可能な場合もあります。脾摘後の感染症予防のため、脾摘前の肺炎球菌ワクチン接種と術後のペニシリン予防内服が推奨されています。小児期を過ぎれば、重症感染症の発生頻度は少なくなります。

病気に気づいたらどうする

 重症例、中等症では骨髄での赤血球造血が盛んなので、葉酸(ようさん)欠乏が生じないように緑黄色野菜を多くとるなど、食事に気をつけてください。また胆石も重要な合併症ですので、定期的に超音波検査を受けることも大切です。

今井 千速

遺伝性球状赤血球症
いでんせいきゅうじょうせっけっきゅうしょう
Hereditary spherocytosis
(子どもの病気)

どんな病気か

 先天性溶血性貧血(せんてんせいようけつせいひんけつ)で、日本の先天性溶血性貧血のうちでは最もよくみられるものです。

原因は何か

 赤血球膜の蛋白に異常があります。そのために、正常の赤血球のように中央がくぼんだ穴のあいていないドーナツ状の形を維持できずに、球状となってしまいます。基本的には常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)の形式をとります。

症状の現れ方

 病的赤血球の破壊が亢進しても、その程度が軽ければ、骨髄(こつずい)の過形成によってカバーされて貧血の症状(表8)が出ないこともあります。

検査と診断

 溶血の亢進と、代償性の赤血球系造血亢進(ぞうけつこうしん)の2つについて検査を進めます。溶血があれば、血清中の間接型ビリルビンが上昇し、尿中ウロビリノーゲンが高値になります。血清ハプトグロビンは軽い溶血があるだけで低下します。アイソトープで目印をつけた赤血球を使用して、赤血球寿命の短縮が確かめられれば決定的です。

 造血亢進は、骨髄穿刺(こつずいせんし)(針を刺して採取する)によって確認されます。末梢血では若い赤血球(網赤血球(もうせっけっきゅう))の増加がみられます。

 溶血性疾患のうち先天性球状赤血球であることを診断するには、末梢血の赤血球像が必須です。顕微鏡で球状赤血球をみれば診断がつきます。補助的には食塩水浸透圧(しんとうあつ)抵抗試験が有用です。

治療の方法

 新生児黄疸(しんせいじおうだん)がまず問題となります。表13に大まかな方針を示します。交換輸血か光線療法(中波長の紫外線を照射する)を行います。

 次に脾臓摘出(ひぞうてきしゅつ)ですが、これは学齢期に入るまで原則としては行いません。


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