六訂版 家庭医学大全科 「避妊法」の解説
避妊法(受胎調節)
(女性の病気と妊娠・出産)
避妊法の選択にあたっては、年齢、出産経験の有無、合併症の有無など身体的条件のほか、今後の出産計画、性交の頻度、避妊・性交に対する個人の考え方、性感染症にかかる危険性、生活習慣など、さまざまな条件を個々に考慮することが必要です。また、どのような手段をとっても、妊娠成立を回避する確率が完全に100%となるわけではありません。避妊法には以下の5つがあります。
①低用量経口避妊薬
卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン作動薬(プロゲスチン)の配合剤であり、月経周期1周期に相当する量が1セットとして処方されます。1周期分として21錠のもの(7日間は休薬)と、28錠のもの(最後の7錠は無作用)があり、多種の薬剤でエストロゲンとプロゲスチンの配合比が細かく調節してありますが、避妊効果の面でほとんど差はありません。
女性の意思のみで行える簡便な方法で有効性もきわめて高く、理想的な避妊法であり、月経痛・過多月経の改善、子宮体がん・卵巣がんのリスク軽減などの副次的な効果もあります。ただし、1周期の間に服用を忘れた日があると避妊効果が得られないことがあるので、十分な注意が必要です。また、常時喫煙する女性、乳がん罹患中や高血圧の女性は経口避妊薬服用に際しリスクが高く、服用すべきでない場合があります。
②子宮内避妊具(IUD)
子宮内に挿入、装着し、着床や精子の輸送能を妨害することにより避妊効果を得るための器具で、「リング」とも呼ばれます。女性の意思のみで行え、有効性も高く、またいったん装着すれば長期間にわたり、意識することなく避妊できるという利点があります。ただし、まれにIUD装着中に妊娠が成立することもあります。
現在使用されているIUDには、器具の内部に銅やプロゲスチンが付加されて、避妊効果をさらに高めたものがあります。使用中にIUDに起因する子宮内感染症を起こすことがあるので、使用中の検診を怠らないことが重要です。また、骨盤内の感染症の既往のある女性には、適さないことがあります。
③その他の器具
男性用コンドーム、女性用コンドーム、ペッサリーなどのバリア法は、使用中の妊娠率が理論的には約5%ですが、実際には使用が不適切であるために、20%程度の妊娠率となってしまいます。
このなかでコンドームは性感染症の予防には有効です。殺精子剤を性交前に挿入する方法も、妊娠率が理論的には約6%ですが、不適切な使用のために、実際の妊娠率は20%を超えるとされており、避妊効果が高いとはいえません。
④器具、薬剤を使用しない方法
排卵日を含む一定期間、性交を避けるリズム法(荻野式)や腟外射精は、不確実な方法であるうえに、誤った知識に基づいて行われることもあり、避妊法としてすすめられません。
⑤性交後避妊(緊急避妊)
性交後に妊娠成立を阻止する方法で、成立しうる妊娠の可能性を4分の1に低下できるとされています。エストロゲンとプロゲスチンの配合剤を内服する方法であり、性交後72時間以内とさらにその12時間後の2回内服する必要があります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報