日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペッサリー」の意味・わかりやすい解説
ペッサリー
ぺっさりー
pessary
女性側に使われる避妊用具の一つ。1878年にドイツで発明され、オランダの産婦人科医の創意によって普及し、イギリスに渡ってダッチ・ペッサリーDutch pessaryとよばれた。弾力のある細いピアノ線をコイル状に巻いたものを円形の輪とし、これを縁としてベレー帽のような形に薄いゴム膜を張った器具。腟(ちつ)内に斜めに装着され、膜はおよそ円形に緊張する。こうして精子の子宮内への貫通を防ぐ目的で用いられる。直径が60ミリメートルから85ミリメートルまで2.5ミリメートル差の多種類があるが、70ミリメートル、72.5ミリメートル、75ミリメートルの3種がもっとも多く使われる。指導(医師、助産師、保健師など)を得て、各自にあう寸法のものを選び、自分で性交前に挿入し、射精後数時間装着したのち、抜去する。避妊効果が不十分なので、今日ではあまり利用されない傾向がある。
なお、受胎防止用以外にも、子宮の位置の異常を矯正し、長期にわたって固定支持する目的で腟内に装着するものは、プラスチック製で、ヒョウタン形あるいは円形の縁どりを有し、ペッサリーまたは矯正環とよばれる。可動性子宮後傾症あるいは子宮や腟の下垂、脱出症の治療法の一つとして用いられることがあるが、利用の機会は減る傾向にある。
[新井正夫]