改訂新版 世界大百科事典 「殺精子剤」の意味・わかりやすい解説
殺精子剤 (さつせいしざい)
spermicide
性交のさいに腟内に入れ,射精された精液中の精子を殺し,妊娠を防ぐ薬剤。表面活性剤のポリオキシエチレン・ノニルフェニルエーテル,メンフェゴールなどを含んだ錠剤,ゼリー,フィルム状製剤などがある。殺精子剤を用いる避妊法は,着想としては古いものであるが,挿入されるものとしてワニの糞,はちみつ,岩塩など医学的にあまり効果のないものが用いられることが多かった。殺精子剤はいずれも腟内の奥深く子宮口付近に入れないと効果が少ない。錠剤は腟内の水分で溶けて炭酸ガスを出し,その泡により腟粘膜内に薬剤が浸透する。泡が男性性器に熱感を与えることがある。ゼリーは注入器に一定量をとり,腟の奥深くに注入するか,ペッサリーの両面に塗る。フィルム状の製剤はたたんで指で腟内に挿入する。挿入から射精までに時間がかかると効果が低くなる。性交時に用いるためにムードをこわす,射精のタイミングに影響する,挿入にこつが必要などの理由から,あまり広くは用いられていない。
→避妊
執筆者:我妻 尭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報