部類記(読み)ぶるいき

改訂新版 世界大百科事典 「部類記」の意味・わかりやすい解説

部類記 (ぶるいき)

日記記録から特定の事項について記事を抄出し,類別編集したもの。平安中期以降,朝儀公事の作法故実が細密化するに伴い,公家日記記述も詳細になる一方,先例尊重の風潮が強まり,先例引勘の便に供するため部類記が作られるようになった。これは早く中国で盛行し,日本でも平安初期以来盛んに作成された類書の編集にならったもので,江戸時代末まで数多くの部類記が生まれた。それらを大別すると,(1)単一の日記から単一の項目について抄出したもの,(2)単一の日記から複数の項目にわたり抄出類集したもの,(3)複数の日記から単一の項目について編集したもの,(4)複数の日記から複数の項目にわたって類別編集したものの4種に分けられる。これを発生順にみると,まず単一の日記を素材とする(1)(2)が世に現れ,日記秘蔵の風がゆるむにしたがって複数の日記による(3)が相次いで現れ,最後に(4)の浩瀚な部類記が編纂された。死去葬送に関する《左経記類聚雑例》や,《山槐記除目部類》は,現存する(1)の早い例である。(2)の例としては,《延喜御記部類抄》をはじめ,《九条殿部類記》や《後三条院御記類聚》が早く作成されたことが文献に見えるが,藤原宗忠がみずからその日記を編集した《中右記部類》は,現在伝存する(2)型の代表例である。(3)は《御産部類記》や《東宮元服部類記》など,臨時の朝儀・公事に関するものを中心として平安末期以降盛んに編集され,以後の部類記の主流となった。一方では江戸時代に入ると,直接的な実用の便よりも,朝儀研究や文献収集などの学問的な関心高揚を背景にして,(4)型の《礼儀類典》《群記類鑑》などが編纂された。ことに《礼儀類典》は徳川光圀が史局に命じて編集させたもので,引用書目233部,収載項目は234の朝儀公事にわたり,全515巻に及ぶ規模を誇った。部類記は現在散逸した原日記記録の記文を数多く収載し,貴重な史料源となっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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