郷庁(読み)きょうちょう

改訂新版 世界大百科事典 「郷庁」の意味・わかりやすい解説

郷庁 (きょうちょう)

朝鮮,李朝時代の地方自治機関。郷射堂,郷所,時所などとも呼ぶ。高麗時代からの地方自治の伝統をひき,在地の両班(ヤンバン)層が中央から派遣される守令(地方官)を補佐・助言する機構として成立した。その長を座首または郷正,構成員を郷任と呼ぶ。地方の徳望のある者から選んで邑内の風俗の取締り,胥吏(しより)の糾察政令下達,民情を守令に伝えるなどの任にあたった。本来郷庁組織は守令の直属の執行機関である郷吏(胥吏)組織とは別で,郷規と呼ばれる独自の内規や,郷案と呼ばれる在地の両班名簿などをもち,中央から派遣される守令の任期が短い(規定では1800日以内)こともあって,在地両班層の強固な所では李朝末期まで独自の権威を保った。しかし一般には郷庁組織の肥大化や,17世紀以降の軍役割当て業務などの雑務の増加で両班層は郷庁を忌避し,郷庁はしだいに富裕な常民の利権組織となって,甲午改革(1894)以降は地方制度の改変により消滅した。
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世界大百科事典(旧版)内の郷庁の言及

【李朝】より

…そして王朝自身も,王族地(宮房田(きゆうぼうでん))のような形で半ば私的に地主的要素を強めていくことになる。中央集権的な郡県体制は維持されたが,地主層(在地両班)は郷庁(地方行政機関の補佐機関)を通じて邑(郡県)の行政を左右した。他方,17世紀前半には乾田直播法に代わる田植法や畑の二毛作が普及し,施肥も一般化して農業の集約化はさらに進んだ。…

※「郷庁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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