ピルビン酸(読み)ピルビンサン(英語表記)pyruvic acid

翻訳|pyruvic acid

デジタル大辞泉 「ピルビン酸」の意味・読み・例文・類語

ピルビン‐さん【ピルビン酸】

pyruvic acid有機酸の一。酢酸臭のある無色の液体。ぶどう酸か酒石酸硫酸水素カリウムとともに加熱すると得られる。生体内に広く存在し、物質代謝の中間産物。解糖によって生じ、無酸素状態では還元されて乳酸となるが、有酸素状態ではトリカルボン酸回路に取り込まれる。化学式CH3COCOOH 焦性ぶどう酸。

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精選版 日本国語大辞典 「ピルビン酸」の意味・読み・例文・類語

ピルビン‐さん【ピルビン酸】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] pyruvic acid の訳語 ) 生体内でブドウ糖が分解して生じる物質代謝の重要な中間化合物。アルファケトカルボン酸の一つ。化学式 CH3COCOOH 酸素が十分あると二酸化炭素と水にまで分解され、ビタミンB1によって促進される。酸素が不足した状態では乳酸(動物)またはアルコール(酵母)になる。焦性葡萄酸

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピルビン酸」の意味・わかりやすい解説

ピルビン酸
ぴるびんさん
pyruvic acid

ケト酸の一種。ブドウ酸(または酒石酸)を硫酸水素カリウムとともに加熱すると得られるので、古くは焦性ブドウ酸とよばれていた。また、2-ケトプロピオン酸ともよばれる。無色で刺激臭をもつ液体で、還元すると乳酸になり、濃硫酸と加熱すると一酸化炭素を放出し酢酸になる。細菌・酵母から動植物に至るまで広く生物体内における物質代謝の中間体として存在するきわめて重要な物質である。

[廣田 穰 2015年7月21日]

生体内のピルビン酸

生物の重要なエネルギー源である炭水化物グリコーゲン)の分解過程において、解糖や発酵などの嫌気的過程と、好気的過程であるTCA回路の接点に存在し、炭水化物代謝の中心的位置を占める。すなわち、糖類が嫌気的過程でホスホエノルピルビン酸になり、このリン酸転移によりピルビン酸とATPが生成する。ピルビン酸が乳酸デヒドロゲナーゼの作用を受けて乳酸になるのが解糖であり、一度、脱炭酸を受けてアセトアルデヒドとなり次にアルコールとなるのが発酵である。また、ピルビン酸脱水素酵素系の作用によってアセチル補酵素Aとなり、オキサロ酢酸と反応してクエン酸となってTCA回路に入る。ここで好気的分解を受けてエネルギー獲得を行う。アセチル補酵素Aは脂肪酸の合成の中心となる物質でもある。また、グルタミン酸からピルビン酸へのアミノ基転移によってアラニンを生ずる。

 このように、ピルビン酸は生体内で炭水化物をはじめ、脂肪酸やアミノ酸の合成・分解に深く関与している物質である。

[飯島康輝]


ピルビン酸(データノート)
ぴるびんさんでーたのーと

ピルビン酸
  CH3COCOOH
 分子式  C3H4O3
 分子量  88.1
 融点   13.62℃
 沸点   165℃(分解)、54℃/10mmHg
 比重   1.267(測定温度20℃)
 屈折率  (n) 1.4259
 解離定数 3.2×10-3(25℃)

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化学辞典 第2版 「ピルビン酸」の解説

ピルビン酸
ピルビンサン
pyruvic acid

2-oxopropanoic acid.C3H4O3(88.06).CH3COCOOH.焦性ブドウ酸ともいう.生体内の物質代謝過程での重要な中間体で,アラニンの前駆物質とも考えられる.シアン化アセチルを加水分解するか,酒石酸またはブドウ酸を硫酸水素ナトリウムと加熱すると得られる.酢酸臭のある液体.融点13.6 ℃,沸点165 ℃(分解),58 ℃(1.3 kPa).1.267.1.4138.K 3.2×10-3(25 ℃).水,エタノール,エーテルに易溶.還元するとD,L-乳酸になる.濃硫酸と加温すると容易に一酸化炭素を放って酢酸となる.有機合成反応,重火傷の軟膏などに用いられる.[CAS 127-17-3]

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改訂新版 世界大百科事典 「ピルビン酸」の意味・わかりやすい解説

ピルビン酸 (ピルビンさん)
pyruvic acid


ピロブドウ酸,焦性(しようせい)ブドウ酸ともいう。すべての生物に存在する低分子物質。代謝における重要な中間生成物。グルコース(ブドウ糖)代謝においては,嫌気的,好気的両過程とも,ピルビン酸に至る反応経路は同じである(エムデン=マイヤーホーフ経路)。脱炭酸されてアセチルCoAを生成する。アミノ酸の分解においては,セリン,アラニン,システイン,グリシンがピルビン酸を経て代謝される。また,アラニンはピルビン酸から合成される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピルビン酸」の意味・わかりやすい解説

ピルビン酸
ピルビンさん
pyruvic acid

化学式 CH3COCOOH 。焦性ブドウ酸,ピロブドウ酸ともいう。酢酸に似た臭いをもつ液体。沸点 165℃ (一部分解) ,融点 13.6℃。生体内の重要な代謝中間体。ブドウ糖を乾留すると得られ,還元すると乳酸を生じる。またアルコール発酵では糖から嫌気的に生成する。アセトアルデヒドと二酸化炭素になり,アセトアルデヒドがエチルアルコールに変る。筋肉中ではグリコーゲンから生成し,筋肉を動かすと乳酸に変り,休養中に乳酸がピルビン酸に酸化され,さらにグリコーゲンが再生される。

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栄養・生化学辞典 「ピルビン酸」の解説

ピルビン酸

 C3H4O3 (mw88.06).

 2-オキソプロピオン酸ともいう.焦性ブドウ酸は旧称.解糖の最終産物であり,多くの物質代謝の鍵となる物質.

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