日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化発酵」の意味・わかりやすい解説
酸化発酵
さんかはっこう
微生物のエネルギー獲得の一形態で、有機物が酸素により不完全酸化を受け、代謝産物として不完全酸化物が多量に蓄積する発酵現象をいう。発酵はエネルギー獲得の原始的状態であり、酸素呼吸はもっとも進化した状態と考えられる。酸化発酵はこの中間にあり、発酵に比較すると、効率もよく進化した状態である。酢酸菌による酢酸発酵はその代表的な例であり、次式のように表すことができる。
このほか、グルコースの不完全酸化によるグルコン酸、5-ケトグルコン酸をはじめとする不完全酸化生産物が蓄積する例があり、生成物の名を発酵の前につけて、グルコン酸発酵などとよぶ。これらは基質の酸化のみが関与しており一次的酸化発酵ともよばれ、普通、酸化発酵というときは、これをさす。広い意味での酸化発酵は、基質と著しく構造の異なる産物を生ずる二次的発酵を含む場合もある。
[飯島康輝]