エチルアルコールを酸化して酢酸をつくる細菌でアセトバクター属Acetobacterにまとめられる。細胞は普通は杆状であるが,40℃ぐらいの高温で培養をつづけると長く伸びた変形となりやすい。運動性のないものが多く,液面に薄い膜状となって生育する。この細菌により酢酸がつくられる過程を酢酸発酵とよび,一種の酸化発酵である。ただし,アルコールの含有量が少ないときは生成された酢酸は,すぐに分解されて炭酸ガスと水になる。この酢酸発酵を利用したものが食酢製造である。使用される細菌はA.aceti(Pasteur)Beij.が主で,日本では酒かす,米,清酒,アルコールなどを原料とし,かす酢,米酢,清酒酢,アルコール酢などがつくられる。食酢には発酵でできた酢酸が3~5%ふくまれている。A.aceti以外にもA.pasteurianum(Hansen)Beij.,A.acetosum(Henn.)Bergey et al.などが食酢製造に用いられる。
執筆者:椿 啓介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
アセトバクターともいい、酢酸を生成する細菌の普通名である場合と、グラム陰性の好気性桿菌(かんきん)の1属として表現される場合とがある。前者はacetobacterとし、後者をAcetobacterとして書き表す。以下、1属としてのAcetobacterを酢酸菌として説明する。
酢酸菌は種類が多く、普通は桿状であるが、しばしば長連鎖状となる。0.6~0.8×1.0~4.0マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)。偏性(絶対的)好気性菌で非運動性、液体培養基の表面に皮膜を形成する。酢酸菌はエタノール(エチルアルコール)を酸化分解して酢酸を生成するが、食酢の醸造はこの性質を利用したものである。このような酢酸発酵においては、酢酸のほかに、アセトンなどのさまざまな副産物のあることが知られている。このほか、酢酸菌は種々の糖類やアルコール類からいろいろな有機酸を生成する。プロパノールからプロピオン酸、ブドウ糖から多量のグルコン酸、D-ソルビットからL-ソルボースを生成するなどがその例である。この作用は発酵工業上重要で、関与する酢酸菌もまた重要である。代表菌はAcetobacter acetiである。
[曽根田正己]
『飴山実・大塚滋編『酢の科学』(1990・朝倉書店)』
「酢酸バクテリア」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…酢酸菌によってエチルアルコールが酸化されてほぼ定量的に酢酸が生成する発酵現象で,古くから食酢醸造に利用されてきた。その発酵過程はの2段階から成り,それぞれアルコール脱水素酵素,アルデヒド脱水素酵素の2種の酵素によって触媒される。…
※「酢酸菌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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