酢酸菌(読み)サクサンキン

  • 酢酸菌 acetic acid bacteria

世界大百科事典 第2版の解説

エチルアルコールを酸化して酢酸をつくる細菌でアセトバクター属Acetobacterにまとめられる。細胞は普通は杆状であるが,40℃ぐらいの高温で培養をつづけると長く伸びた変形となりやすい。運動性のないものが多く,液面に薄い膜状となって生育する。この細菌により酢酸がつくられる過程を酢酸発酵とよび,一種酸化発酵である。ただし,アルコールの含有量が少ないときは生成された酢酸は,すぐに分解されて炭酸ガスと水になる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アセトバクターともいい、酢酸を生成する細菌の普通名である場合と、グラム陰性の好気性桿菌(かんきん)の1属として表現される場合とがある。前者はacetobacterとし、後者をAcetobacterとして書き表す。以下、1属としてのAcetobacterを酢酸菌として説明する。

 酢酸菌は種類が多く、普通は桿状であるが、しばしば長連鎖状となる。0.6~0.8×1.0~4.0マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)。偏性(絶対的)好気性菌で非運動性、液体培養基の表面に皮膜を形成する。酢酸菌はエタノール(エチルアルコール)を酸化分解して酢酸を生成するが、食酢の醸造はこの性質を利用したものである。このような酢酸発酵においては、酢酸のほかに、アセトンなどのさまざまな副産物のあることが知られている。このほか、酢酸菌は種々の糖類やアルコール類からいろいろな有機酸を生成する。プロパノールからプロピオン酸、ブドウ糖から多量のグルコン酸、D-ソルビットからL-ソルボースを生成するなどがその例である。この作用は発酵工業上重要で、関与する酢酸菌もまた重要である。代表菌はAcetobacter acetiである。

[曽根田正己]

『飴山実・大塚滋編『酢の科学』(1990・朝倉書店)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 酢酸発酵を行なう細菌類。いずれも好気性の桿菌(かんきん)で、多くは連鎖状につながる。天然には酵母類を伴って果実や酒類などの糖やアルコールに富む天然物に存在。酢(す)などの生産に用いられるが、酒類を酸敗させる有害菌でもある。酢酸バクテリア。酢母。

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世界大百科事典内の酢酸菌の言及

【酢酸発酵】より

酢酸菌によってエチルアルコールが酸化されてほぼ定量的に酢酸が生成する発酵現象で,古くから食酢醸造に利用されてきた。その発酵過程はの2段階から成り,それぞれアルコール脱水素酵素,アルデヒド脱水素酵素の2種の酵素によって触媒される。…

※「酢酸菌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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