醪/諸味 (もろみ)
発酵工業および醸造で,目的とする物質や醸造物をつくるため,発酵菌を培養した酒母と発酵原料とを混合したもの。酒の場合には〈醪〉,みそ,しょうゆなどの調味料の醸造では〈諸味〉と書く。中国の白酒(パイチユウ)や日本のみそのように少量の水とともに仕込む固体ないし半固体状のもろみ,ビールや白ブドウ酒のような液状のもろみ,清酒や焼酎のように蒸米や米こうじが水のなかに分散している固液混合のもろみなど形状はさまざまである。もろみが雑菌で汚染されず,酒母で育成した発酵菌のみが増殖し,正常な発酵が行えるように,もろみの製造に際しては酒母に加える発酵原料を蒸煮によって殺菌し,かつ酒母の発酵菌を増殖させながら原料を数回にわけて酒母に投入する〈段仕込法(だんじこみほう)〉を用いるのが基本である。清酒の場合,酒母に蒸米,こうじ,水の混合物を3回にわけ4日間にわたって仕込み,酒母の約15倍の重量のもろみを製造するが,この段仕込法は日本では15世紀中期にすでに開発されていた。
なお,《和名抄》が〈汁滓酒〉としているように,かすをこしてない濁酒(どぶろく)が清酒のもろみである。しょうゆのもろみは,なめみその一種として,キュウリ,ウド,新ショウガなどにつけて食べる。
執筆者:菅間 誠之助+小室 康
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
醪
もろみ
酒や醤油を醸造するとき,発酵している原料から,粕 (かす) をこす前のもの。清酒醪,アルコール醪,ビール醪などがある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の醪の言及
【酒】より
…酒税法上の種類としては,米,米こうじ(麴),水などを原料として発酵させ,ろ過した清酒,麦芽,ホップ,水を原料として発酵させたビール,果実を原料として発酵させた果実酒類中の果実酒(ブドウ酒,リンゴ酒など)で,清酒の発酵液をろ過せず供する濁酒や麦こうじを原料の一部とする中国の[紹興酒]や韓国のマッカリ,家畜の乳を発酵させたケフィール,クミスなどの[乳酒]は雑酒に含まれる。[醸造酒] 蒸留酒は,醸造酒の発酵液([もろみ]),またはそのろ液やろ過残渣(ざんさ)([酒かす])を蒸留したものをいう。酒税法上の種類としては,アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留した焼酎甲類(ホワイトリカー),デンプン質原料,こうじ,水を原料として糖化,発酵させ単式蒸留機で蒸留した焼酎乙類(本格焼酎)などの焼酎,麦芽などの発芽穀類と水を原料として糖化,発酵させ蒸留したウィスキー,および果実を原料として発酵させ蒸留したブランデーを含むウィスキー類のほか,スピリッツ類がある。…
【蒸留酒】より
…穀類や果実などを原料とし,これらを発酵,蒸留してつくった酒。ビールや白ブドウ酒の発酵液(もろみ)を蒸留したものが,それぞれモルトウィスキーやブランデーであるように,伝統的醸造酒には対応する蒸留酒がある。 形状からみて,蒸留に使われたと思われる土器は,紀元前3000年ころのメソポタミア文明の遺跡から出土しているが,ブドウ酒の蒸留を記録したのはアリストテレス(前384‐前322)がはじめである。…
【清酒】より
… 室町期になって,酒造技術は大きく進歩した。すなわち,まず蒸米,こうじ,水でつくった酒母に蒸米,こうじ,水の混合物を2度にわけて順次仕込んでもろみ(醪)を増量する二段仕込法が開発された。15世紀ころ名酒の名をうたわれていた天野酒は,現大阪府河内長野市の天野山金剛寺がつくっていた酒であるが,この技術を採用しており,おそらく酸味のおだやかな点が世にもてはやされたものであろう。…
※「醪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」