デジタル大辞泉 「白酒」の意味・読み・例文・類語
しろ‐ざけ【白酒】
[類語]酒・
「御酒」の上代特殊仮名遣は「み」「き」ともに甲類であるが、「白酒」「黒酒」の場合の「き」は乙類となる。その理由は不明。
雛祭の祝酒とされる混成酒。清酒,焼酎,みりんなどに蒸したもち米とこうじを加えて発酵させ,甘いもろみになったところで,もろみをすりつぶして粘稠(ねんちゆう)な酒にしたもので,白く濁って甘みが強い。雛祭に白酒を使うようになったのは19世紀に入ってからのようであるが,白酒そのものは江戸初期にはすでに京都六条油小路の酒屋でつくっていたものが有名であった。山川酒というのがそれで,歌舞伎の《助六》や《乗合船》に登場する白酒売は〈山川〉と書いたうちわを手に持っている。幕末近く大坂と江戸に白酒で有名な店があった。大坂にあったのは堀江(現,中央区)和光寺門前にあったみそ屋の河庄で,店先に水車ようの大きな車をすえつけ,その中に人が入ってまわすと,いくつもの石臼がそれに連動してもろみをすりつぶして白酒ができるというのが評判だった。江戸では神田鎌倉河岸の豊島屋酒店の白酒がたいへんな人気だった。毎年2月の末に売ったというが,売出し当日は未明から手に手に桶を携えた人々が詰めかけ,その客めあてのそば屋や大福餅屋が路傍に店開きするほどであった。白酒売は《守貞漫稿》のいうように春のもので,元禄ころには春の町を呼売していたようで,《続猿蓑》に〈朧夜(おぼろよ)の白酒売の名残かな 支考〉の句が見られる。
執筆者:鈴木 晋一
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白濁した濃い酒で、甘味が強い。もとは物見遊山にも携えたが、近世以降は3月3日の桃の節供(雛祭(ひなまつり))に飲む酒として知られている。蒸し米、米麹(こめこうじ)を焼酎(しょうちゅう)とともに仕込み、約1か月熟成させたもろみをすりつぶしてつくる。アルコール分9%、エキス分45%で、甘くどろりとした酒。白酒と同類のものとして筑前(ちくぜん)(福岡県)博多(はかた)産の練酒(ねりざけ)が有名で、室町中期の禅僧大極(だいきょく)の日記『碧山日録(へきざんにちろく)』応仁(おうにん)2年の条(1468)にすでにその記事がみえる。厳冬に清酒に蒸し糯米(もちごめ)を加え、あるいは麹を加えて保存し、石臼(いしうす)でひいてつくった。濃く滑らかで甘く、これが江戸に伝えられると下戸(げこ)、婦女子に至るまで好んだという。「山川」「初霜(はつしも)」などの銘柄が知られ、歌舞伎(かぶき)にも「山川」白酒が登場している。神田(かんだ)鎌倉河岸(がし)(東京都千代田区)にあった酒店豊島屋(としまや)の白酒は有名で、例年2月末には「酒醤油(しょうゆ)相休申候」と大書して、白酒のみを商い、門前に市(いち)が立つほどのにぎわいを呈し、『江戸名所図会(ずえ)』にもその繁盛ぶりが描かれている。1000石を売り尽くしたという。雛祭は女子が主人役をつとめる封建時代の唯一の祭りで、白酒の果たした役割は大きかったと思われる。1939年(昭和14)ころには年間100キロリットルくらいが日本全国で飲まれていた。
[秋山裕一]
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…新嘗祭(にいなめさい),大嘗祭(だいじようさい)に供する酒のこと。白酒は,醸したままの原酒をこしたもので,色が白いためこの名がある。黒酒は,この白酒にさらに久佐木(くさき)の灰を加えてつくったもの。…
… 大化改新後,宮内省のなかに造酒司(さけのつかさ)がおかれ,《延喜式》によるとここでこうじを使ってなん種類かの酒がつくられていた。なかでは新嘗会(しんじようえ)に使われた白貴(しろき)(白酒(しろき)),黒貴(くろき)(黒酒(くろき))と呼ばれる酒が有名で,10月上旬の吉日に臼殿(うすどの)で米をつき,こうじ室(むろ)でこうじをつくり,酒殿(さかどの)に並べたかめに蒸米とこうじと水を混ぜて酒を仕込んだ。現在の酒母(しゆぼ)の仕込みに近いが,こうして10日ほどで白貴ができる。…
…(4)麩麴(ふきく) 麩は小麦製粉の副産物であるふすまのことで,ふすまと米ぬか,コーリャンぬかなどの混合物に,純粋培養のクロコウジカビAspergillus niger,シロコウジカビA.kawachii,コウジカビA.oryzaeなどの糖化力の強い菌と酵母を接種,培養したもの。このこうじによって,とくに白酒用の大麴原料である麦や豆が節約できるようになったほか,製麴に要する日時が短縮された。1960年の通風製麴の創案によって,麩麴による白酒製造は能率化し,現在中国の白酒の80%以上がこれを用いてつくられている。…
※「白酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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