重過リン酸石灰
じゅうかりんさんせっかい
リン鉱石をリン酸またはリン酸と硫酸の混酸で処理、分解して得られる水溶性のリン酸一石灰を主体とするリン酸肥料の一つで、略して重過石または重過リン酸という。過リン酸石灰と異なる点は、製法の違いにより石膏(せっこう)(硫酸カルシウム)の含量が少ないことで、逆にリン酸含量は高い。日本では可溶性リン酸含量が30%以上のものを重過リン酸石灰、30%未満のものを過リン酸石灰と定義づけて区別している。しかしこの基準は国により異なっており厳密なものではない。また、22%以上のものを包括して濃厚過リン酸、22%未満のものを普通過リン酸と2大別することもある。日本で生産されている重過リン酸石灰の平均品位は約38%で、リン酸分解のものが45~47%と高く、混酸分解のものでは33%程度のものが多い。有効リン酸の成分が2、3倍高いだけで肥効は普通の過リン酸石灰とほぼ同じである。
[小山雄生]
『伊達昇・塩崎尚郎編著『肥料便覧』第5版(1997・農山漁村文化協会)』▽『肥料協会新聞部編『肥料年鑑』各年版(肥料協会)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
重過リン酸石灰
ジュウカリンサンセッカイ
double superphosphate of lime
リン酸カルシウムを主体とするリン酸分の濃い肥料.リン酸によりリン鉱石を分解すると得られる.硫酸を用いないことで,肥料効果のないセッコウができないので有利である.生成反応は,
Ca5F(PO4)3 + 7H3PO4 + 5H2O →
5CaH4(PO4)2・H2O + HF↑
リン酸P2O5含有量40~50% のものを重過リン酸石灰とよび,それに対し,出発物質にリン酸ではなく硫酸を用いて得られるリン酸含有量15~20% のものを過リン酸石灰とよぶ.原単位は重過リン酸石灰(P2O542%)1 t に対しリン鉱石0.35 t,リン酸(P2O5100%)0.3 t.[別用語参照]リン酸肥料,化学肥料
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の重過リン酸石灰の言及
【過リン酸石灰(過燐酸石灰)】より
…過石と略称される重要な速効性の[リン酸肥料]。後述の重過リン酸石灰と区別する意味で〈普通過リン酸石灰〉と呼ぶことも多い。リン酸二水素カルシウム1水和物Ca(H2PO4)2・H2O(水溶性)と硫酸カルシウムCaSO4との混合物からなる粒状製品である。…
【リン酸肥料(燐酸肥料)】より
…日本では88年に過リン酸石灰の製造が開始されたのが工業的リン酸肥料生産の始めである。以後,1936年にはトーマスリン肥,49年に溶成リン肥,57年に焼成リン肥の生産が開始され,そのころより重焼リン,重過リン酸石灰,リン安なども生産されるようになり,リン酸肥料の種類は多様化した。 日本のリン酸肥料生産量は成分(P2O5)として約70万tで,その大部分が国内で消費されている。…
※「重過リン酸石灰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」