日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸肥料」の意味・わかりやすい解説
リン酸肥料
りんさんひりょう
主成分としてリンを含有する肥料の総称。リンは植物の生育に不可欠であり、エネルギー代謝やタンパク質の合成、遺伝の場において重要な役割を演じる。リンは開花結実に関係し、実肥(みごえ)ともよばれる。リンが欠乏すると、生育が貧弱となり、開花、成熟が遅延し、茎や葉の割合に対して実の収量が少なくなる。
リン酸肥料には多くの種類があるが、有機質のものと無機質のものに大別される。有機質のものは自給肥料、有機質肥料に属するもので、骨粉、米糠(こめぬか)、草木灰などはリン酸を多く含むが、カリ(カリウム)なども含んでいる。これらはかつて重要なリン酸肥料であったが、現在は大部分が無機質のもので占められている。無機質リン酸肥料は多くの種類があるが、よく使われる分類法は、含まれるリン酸の溶解度によるものである。用いる溶解液として、水、クエン酸アンモニウム液(ペーテルマン液)、2%クエン酸液の3種類があり、それぞれ水溶性、可溶性、ク溶性リン酸という。またその含有量の違いからリン酸肥料としての分類と評価がなされる。水溶性リン酸を主体とする肥料には過リン酸石灰、重過リン酸石灰、リン酸アンモニウム、リン酸マグネシウムなどがあり、とくに過リン酸石灰は世界でいちばん早くつくられた化学肥料で、よく使われている。可溶性リン酸またはク溶性リン酸を主体とするものには溶性リン肥、焼成リン肥、トーマスリン肥などがある。酸性土壌に好適であり、土壌改良材としても使用される。1960年代までは単肥がおもに使用されていたが、現在では複合肥料の割合が高くなっており、リン酸肥料を単独で使用することは少なくなっている。
[小山雄生]
『伊達昇・塩崎尚郎編著『肥料便覧』第5版(1997・農山漁村文化協会)』▽『肥料協会新聞部編『肥料年鑑』各年版(肥料協会)』