日本大百科全書(ニッポニカ) 「過リン酸石灰」の意味・わかりやすい解説
過リン酸石灰
かりんさんせっかい
リン鉱石に硫酸を反応させて得られる灰白色ないし灰黒色の粉末で、第一リン酸カルシウムと硫酸カルシウム(石膏(せっこう))との混合物。遊離リン酸のため酸性を呈する。過リン酸、過石などと略称される。世界でもっとも古くから製造された化学肥料で、市販品の品位は可溶性リン酸15~26%(平均18%前後)を含む。日本では1886年(明治19)高峰譲吉が試製し四国のアイ(藍)の栽培に初めて使用した。現在では複合肥料の原料用が総生産の7割を超えている。化学的には酸性肥料であるが生理的には中性肥料であって、連用しても土壌を酸性化しない。肥効は速効性であるが、土壌中の鉄、アルミニウムと結合し、作物に吸収されにくくなるので、作物による利用率は通常ほかの化学肥料に比べて低い。過リン酸石灰のこのような性質は、逆に、アルミニウムが活性化しやすい火山灰土壌などの礬土(ばんど)質土壌の改良に有効であり、大量に施用されていた。しかし、蓄積リンと将来のリン資源の枯渇問題から、消費量は横ばいとなっている。
[小山雄生]
『伊達昇・塩崎尚郎編著『肥料便覧』第5版(1997・農山漁村文化協会)』▽『肥料協会新聞部編『肥料年鑑』各年版(肥料協会)』