野郎評判記(読み)やろうひょうばんき

改訂新版 世界大百科事典 「野郎評判記」の意味・わかりやすい解説

野郎評判記 (やろうひょうばんき)

歌舞伎若衆に対する評判の書。いわゆる野郎歌舞伎若衆歌舞伎禁止後〈狂言尽し〉を標榜して成立したが,美少年の歌舞伎若衆をスターとし,その美しい容姿と歌舞の魅力を売り物としていたから,それを男色趣味にもとづいて評判する書が,遊女評判記の影響のもとに作られた。歌舞伎若衆は表向きは〈野郎(成人男子)〉であったから,これを〈野郎評判記〉という。評するところは主としてその容色,性格,歌舞の巧拙,声のよしあし,酒宴の座などでの座持ち,色を売る若衆としての客に接する態度から閨中の味わいに及び,詩歌や肖像画を添えることが多い。刊行は1656年(明暦2)からと伝えるが,現存するものは60年(万治3)刊《野郎虫(やろうむし)》から1700年(元禄13)刊《姿記評林(しきひようりん)》に至る。〈役者評判記〉成立の基盤となったもので,歌舞伎史,絵画史,風俗史の資料として重要。《歌舞伎評判記集成》に収録。
役者評判記
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の野郎評判記の言及

【劇評】より

…また,中世には,能,狂言に関する劇評的記述も諸書に散見される。江戸期に入り,《遊女評判記》にならって,歌舞伎の《役者評判記》(初期のものは〈野郎評判記〉と呼ぶ)が刊行されるようになった。初めは役者の容色,姿態を品評するだけであったが,しだいに技芸評に重点がおかれるようになり,《役者口三味線(くちざみせん)》(1699∥元禄12)にいたって新しく合評形式を確立した。…

※「野郎評判記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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