若衆(読み)ワカシュ

デジタル大辞泉 「若衆」の意味・読み・例文・類語

わか‐しゅ【若衆】

若い者若者若い衆
少年。特に、男色の対象となる少年。ちご。
「ほれた―と参会の夜」〈仮・犬枕
江戸時代、元服前の前髪姿の少年。
「さもいつくしき女房たち、又は―も打ち交じり」〈仮・恨の介・上〉
男色を売る男。また、歌舞伎役者で、舞台をつとめるかたわら男色を売った者。歌舞伎若衆歌舞伎子陰子かげこ。色子。
堺町若女形瀬川菊之丞といへる―の色に染められて」〈根無草

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精選版 日本国語大辞典 「若衆」の意味・読み・例文・類語

わか‐しゅ【若衆】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「わかしゅう」とも )
  2. 年若い者。若者。特に、元服前の男子。若衆髷(わかしゅまげ)の男子。
    1. [初出の実例]「於笞辺哥笛、所雑色若衆舁御琴、或此間被一舞」(出典:江家次第(1111頃)一〇)
  3. 中世、村落を構成する若者集団。村は乙名(おとな)・中老・若衆からなり、若衆は、村の軍事・警察力として機能した。
    1. [初出の実例]「上廿人乙名、次之中乙名、又末の若衆相ともに、如法致可沙汰」(出典:菅浦文書‐寛正二年(1461)七月一三日・菅浦惣庄置文)
  4. 寺院で、大僧となる以前の少年僧。
    1. [初出の実例]「就其、若衆被子細事、先寺家之掟、可先規之条勿論也」(出典:高野山文書‐永享七年(1435)六月晦日・両所十聴衆評定事書)
  5. 美しい少年。美少年。特に、男色の相手をする少年。男色関係にある少年。ちご。
    1. [初出の実例]「なに事もしらぬ若衆のそばにねて うしろをまへになすよしもがな」(出典:俳諧・竹馬狂吟集(1499)九)
  6. 歌舞伎役者で、舞台に出るかたわら男色を売った者。歌舞伎若衆。また、一般に男色を売ることを業とする男。歌舞伎子。舞台子。色子(いろこ)。陰子(かげこ)
    1. [初出の実例]「猿楽と申若衆と申。言語道断見物此事に候」(出典:勝山記‐享祿四年(1531))
  7. わかしゅまげ(若衆髷)」の略。

わかい‐しゅ【若衆】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「わかいしゅう」とも )
  2. 年若い男子。若い者。
    1. [初出の実例]「わかひしゅうの申さるるは」(出典:虎明本狂言・老武者(室町末‐近世初))
  3. 特に、肉体労働などに従事する元気のよい人。若い者。
    1. [初出の実例]「一寸(ちょいと)車夫(ワカイシュ)に声を懸けたが」(出典:婦系図(1907)〈泉鏡花〉後)
  4. 商店などで、小僧より年長で階級の上の者のこと。手代。若い者。
    1. [初出の実例]「第一内かたは(りんき)ふかし面屋の若(ワカ)い衆(シュ)と物云事も嫌ひ給ふなり」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)四)
  5. 歌舞伎の楽屋、芝居茶屋、遊郭などで働く男をいう。若い者。
    1. [初出の実例]「わかいしゅおれがぞうりをくんない」(出典:洒落本・呼子鳥(1779)品川八景)
  6. 歌舞伎で、最下級の役者をいう。普通は番付に名が出ない。
    1. [初出の実例]「馬役をつとむる者は若い衆(シュ)ではござらぬ」(出典:滑稽本・客者評判記(1811)中)

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改訂新版 世界大百科事典 「若衆」の意味・わかりやすい解説

若衆 (わかしゅう)

若い衆,若者,若,若連,若勢,二才(にせ)ともよばれ,15歳前後から妻帯時までの男性を指す用語。若衆組に参加すると,若者宿に入って序列を相互に確認し合い,一定期間集団生活を体験し,地域共同体の生活に必要な事柄を習得する。若衆組は近代になると青年団に改組されたが,青年団は地域社会の実務を担当した。1637年(寛永14),近江国蒲生郡蛇溝村が隣村今堀村と水争いをしたとき,実力行使の先頭にたったのは若衆であった。若衆は所定の年齢に達するとおとな(老人)の階梯に進む。室町時代,近江国菅浦荘では上の20人の乙名(おとな),次の中乙名,末の若衆という3階梯に分かれていた。この階梯は若衆加入の順序による﨟次(ろうじ)にもとづいている。1751年(宝暦1)近江国蒲生郡今堀村の十禅師権現宮座において〈御宮御若イ衆座御仲間衆中〉が独自の仲間掟をもっていたことが知られる。
若者組
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百科事典マイペディア 「若衆」の意味・わかりやすい解説

若衆【わかしゅう】

日本で地域によって若い衆,若者,若,二才(にせ)などともよばれ,15歳前後から妻帯時までの男性を指す語。地域共同体ごとに組織された若者組に参加し,若者宿に入って一定期間の集団生活を体験し,若者組自体が共同体の社会的機能のある部分を担当するなかで,その共同体の成員としての生活に必要な事柄を習得する。近代には青年団に改組された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「若衆」の意味・わかりやすい解説

若衆
わかしゅう

元服前の前髪立ちの少年をさすが、単に若者の意もある。若衆はまた陰間(かげま)とともに、衆道における江戸初期からの呼び名である。男色関係で若衆はとくに17、8歳までの弟分をさし、兄分の念者とは義理を重視する間柄であった。若衆髷(まげ)に薄化粧で、華やかな伊達(だて)衣装に身を飾った。また、若衆歌舞伎(わかしゅかぶき)の少年俳優に男色の相手をする者がいた。のちには一般客をとる男娼(だんしょう)が出現し、江戸では陰間茶屋として宝暦(ほうれき)(1751~64)前後に全盛をみた。

[稲垣史生]

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世界大百科事典(旧版)内の若衆の言及

【陰間】より

…江戸で用いた男娼(だんしよう)の通称。1652年(承応1)に若衆(わかしゆ)歌舞伎が禁止されたのは,その役者が男色の対象とされ,売色が盛んに行われたためであった。とくに年少者が求められたため,まだ舞台には立てぬ養成中の少年役者の売色が多く,それを専業とするものが少なくなかった。…

【男色】より

…とくに戦国時代には,尚武の気風からことさらに女性をさげすみ,男色を賛美する傾向が強まった。その中から,男色における兄分(念者(ねんじや),念人(ねんにん))と弟分(少人(しようじん),若衆)との間の倫理的契約(義理,意気)を重んじた衆道(しゆどう),若道(にやくどう)の成立をみるにいたった。こうした男色流行は江戸時代の前期に受けつがれ,士,僧のほか一般庶民の間にもその風がひろまり,若衆歌舞伎の発展はこれを助長するとともに,男色を売る男娼――陰間(かげま)が出現するに及んだ。…

【宮座】より

…14世紀以降の荘園制の解体と惣庄・惣村((そう))の成立により地縁的な性格を強めた宮座の活動が近畿地方を中心に顕著にみられるようになった。そこでは左座と右座,東座と西座,横座・中座・下座,古座と新座というように重層的な構造をもつものがみられ,また宮座を構成する座衆が若衆,中老,おとな(乙名,老,年寄)という﨟次(ろうじ)により区分される例がみられた。この時期には惣村制を背景に宮座のおとな層が惣村の運営にあたることも多かった。…

【老若】より

…《日葡辞書》に〈老人と若者と〉とある。〈老若男女〉〈貴賤老若〉というように,本来はすべての人を意味する語句であるが,江戸時代の共同体社会では,おとな(老人)と若衆とを指し,二つの年齢集団を意味する用語である。若衆は15歳前後から老人になる以前の若者集団,老人は老人成(官途成)の儀礼を通過したものをいう。…

※「若衆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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