日本大百科全書(ニッポニカ) 「金属せっけん」の意味・わかりやすい解説
金属せっけん
きんぞくせっけん
metallic soap
高級脂肪酸(炭素数7~22)、樹脂酸、ナフテン酸などのアルカリ土類金属および重金属の塩をいう。高級脂肪酸のアルカリ金属塩、すなわちせっけんとは区別される。
よく用いられる金属は、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉛、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、バリウム、スズ、金、銀、鉄、カドミウムなどである。
製法には次の3種類の方法がある。
(1)沈殿法(複分解法) カルボン酸またはエステルと水酸化ナトリウムとを反応させてナトリウムせっけんの水溶液をつくり、これに金属塩の水溶液を加えて金属せっけんを沈殿させる。
(2)溶融法 カルボン酸またはエステルと金属の水酸化物、酸化物、弱酸塩などとを高温で反応させる。
(3)直接法 カルボン酸と亜鉛などの金属粉末とを反応させる。
形状は一般に結晶性の固体で、水に不溶である。溶媒としてベンジン、鉱油、ベンゼン、アルコール、エーテルなどが用いられるが、金属、脂肪酸および溶媒の種類によって溶解性に大きな違いがある。用途は、顔料、塩化ビニル樹脂の安定剤、乾燥剤、増粘剤、防水剤、サイジング剤、化粧品、医薬、農薬など多方面にわたっている。
[篠塚則子]