改訂新版 世界大百科事典 「金属粉末」の意味・わかりやすい解説
金属粉末 (きんぞくふんまつ)
metal powder
金属粉末とは,大きさが1000μm(1/1000mm)以下の金属粒子の集合体をいう。金属粉末は,他の無機物または有機物の粉末とほぼ同様に,塊状物質にみられない性質,すなわち流動性,混合性,圧縮性,成形性,爆発性,焼結性などを有する。これらの性質は,粉末の成分ばかりでなく,粒子の大きさや形状などに依存して変化する。各種の金属粉末には,これらの性質を利用した独特の用途があるが,現在多量に使われている粉末は鉄粉,アルミニウム粉,銅粉などである。鉄粉は,酸化物の還元法,溶湯のアトマイズ法(アトマイズ粉末)などによって作られ,各種の焼結材料(小型歯車などの機械部品,小型モーターの鉄心,家庭用電気器具や自動車の含油軸受,高負荷用摩擦板)や溶接棒の原料,メタルテープの磁粉などとして用いられる。アルミニウム粉は,主としてアトマイズ法によって作られ,銀色塗料,鉄溶湯保温材,印刷用インキ,火薬などに使用される。銅粉は,硫酸銅水溶液の電解析出法によって作られ,ほとんどが焼結材料(電車の集電装置のすり板,電気接点,含油軸受,ダイヤモンド工具の結合材)の原料として用いられる。このほか,タングステン粉は電球フィラメント,コバルト粉は超硬合金,モリブデン粉は高温用発熱体,ニッケル粉は磁性材料,銀粉は電気接点,ベリリウム粉は原子炉の熱中性子減速材などの原料としてそれぞれ用いられる。
→焼結
執筆者:林 宏爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報