日本大百科全書(ニッポニカ) 「金蔵獅子」の意味・わかりやすい解説
金蔵獅子
きんぞうじし
民俗芸能。二人立ちの獅子舞で、岐阜県高山市国府(こくふ)町広瀬町をはじめ飛騨(ひだ)地方および富山県の隣接地帯に分布する。名称は、獅子あやしとして登場する金蔵という男神の名をとったもの。獅子は普通は悪魔を払う聖獣とされているが、この地方では人々の暮らしを妨げる悪獣とされ、金蔵がその悪(あ)しき獅子を退治するさまを表現し、大昔、飛騨の民が狩猟生活をしていたころの遺風であると伝えられる。広瀬では5月4日に行われ、広瀬神社に奉仕していた僧侶(そうりょ)が行った田楽(でんがく)の遺風と伝えている。天狗(てんぐ)面の金蔵にはおかめ面の女神が付き添い、獅子の後ろについて金蔵のもどきを演じながら応援する。獅子頭(がしら)につける、大きく鬣(たてがみ)を描いた胴幕(どうまく)が特徴的である。囃子(はやし)は笛、太鼓、摺鉦(すりがね)。
[西角井正大]