獅子(読み)シシ

デジタル大辞泉 「獅子」の意味・読み・例文・類語

し‐し【×獅子】

ライオン古来百獣の王とされる。
高麗から伝来したとされる、1に似た想像上動物。木・石・金属などで作り、狛犬こまいぬと対にして神社社頭などの左側に置いて魔よけとした。後世狛犬混同
獅子頭ししがしら1」の略。
獅子舞」の略。
[類語](1ライオン猛虎ジャガーピューマチーター

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「獅子」の意味・わかりやすい解説

獅子
しし

哺乳(ほにゅう)類食肉目ネコ科の猛獣ライオンlionの称。「師子」とも書く。古来百獣の王とされ、たたえて「獅子王」ともよんだ。その威容および迅速勇猛な性質から、多くの民族において力や権威、王権などの象徴となっている。東アジアでは、これをもとに想像上の獣が考えられた。仏教では、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)の乗り物であり、「獅子吼(く)」は、獅子の咆哮(ほうこう)が百獣を威服させるところから、釈迦(しゃか)の説法を比喩(ひゆ)する。「獅子座」は仏の座席、転じて高僧の座をいう。獅子には悪魔を圧する霊力があると信じられたために、門や扉の守護物とする習俗が生じ、日本でも、神社の社前や宮中の鎮子(ちんし)に、狛犬(こまいぬ)と対をなして獅子の像を置き魔除(よ)けとした。新年や祭礼に「獅子頭(がしら)」をかぶって舞う「獅子舞」も、悪霊退散の呪術(じゅじゅつ)であり、日本へは中国から伝来した。なお、「唐獅子(からじし)」(外国の獣(しし)の意)は、絵画彫刻に装飾化した獅子をいう場合があり、ことに牡丹(ぼたん)の花との配合はもっとも絢爛(けんらん)豪華な意匠である。

[兼築信行]

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百科事典マイペディア 「獅子」の意味・わかりやすい解説

獅子【しし】

ライオンのこと。アッシリアインドでは王や仏の守護動物とされ,装飾にも用いられた。伎楽,舞楽,行道などの獅子はその様式化されたもの。古来日本ではイノシシ,シカなどの食用獣類を〈しし〉といったので,これと区別して唐(から)獅子(外国の獅子の意)ともいう。獅子舞に用いる獅子頭(がしら)にも伎楽系の唐獅子のほかイノシシ,シカ,竜頭がある。

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世界大百科事典 第2版 「獅子」の意味・わかりやすい解説

しし【獅子】

(1)伎楽・舞楽の曲名および役名とその演技 〈師子〉と記した例が多い。ともに伝承は絶えているが,民俗芸能の獅子舞や鹿踊(ししおどり),能の獅子舞,近世邦楽や歌舞伎舞踊の獅子物・石橋物など,日本芸能史における獅子の芸能の淵源を示すものと考えられる。伎楽の獅子は,行道の先導役,治道(ちどう)に続いて登場し,悪魔払いの役目をつとめたとみられる。これから派生したものに小部氏の秘曲によって奏された《師子》があり,平安朝以来諸大寺の供養に用いられ,その一部は現在わずかに大阪四天王寺に伝えられている。

しし【獅子】

日本ではライオンと同義に用いる。中国の《漢書》西域伝では,西域伝来の動物とし,後世の注釈者は,中国の虎豹をも食うという狻麑(さんげい)(猊)にあてている。獅子(ライオン)は百獣の王といわれ,その威厳ある姿は古くから動物闘争文(アニマル・スタイル)や狩猟文などに好んで用いられた。ウル第1王朝期以降の遺物にみられる動物闘争文には牛にかみつく獅子文があり,その文様は後にペルシアのペルセポリスの浮彫にも用いられている。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「獅子」の解説

獅子
(通称)
しし

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
石橋 など
初演
元文3.3(京・早雲座)

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デジタル大辞泉プラス 「獅子」の解説

獅子

池波正太郎の歴史小説。1973年刊行。真田もの。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「獅子」の解説

獅子 (シシ)

動物。ライオンの和名

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世界大百科事典内の獅子の言及

【狛犬】より

…その起源はペルシアやインド地方にあるが,日本ではその異形な姿を犬と思い,日本犬とはちがっているので,異国の犬すなわち高麗(こま)の犬と考えたのである。したがって狛犬と獅子と形を混同したものがあるが,平安時代には明確に区別していた。たとえば清涼殿の御帳前や天皇や皇后の帳帷の鎮子(ちんず)には獅子と狛犬が置かれ,口を開いたのを獅子として左に置き,口を閉じ頭に1角をもつもの(人の邪正をよく知るという獬豸(かいち)といわれる獣)を狛犬として右に置いた。…

【ライオン】より

…シシ(獅子)の別名をもち,〈百獣の王〉と呼ばれ,ネコ科ではトラと並ぶ強大な食肉類(イラスト)。かつてはバルカン半島,アラビア半島からインド中部までと,アフリカの大部分に分布したが,人間との競合で分布をしだいに狭め,前100年ころにはギリシアで滅び,1858年にアフリカのケープ,65年ナタール,91年アルジェリア,1920年ころモロッコやイラク,30年ころにはイランから姿を消し,現在ではアジアではインド北西部カティアーワール半島のギル森林に一亜種インドライオンP.l.persicaが180頭ほど生息するにすぎない。…

【舞事】より

…能の舞事には,笛(能管)・小鼓・大鼓で奏する〈大小物(だいしようもの)〉と太鼓の入る〈太鼓物〉とがあるが,その両者を含めて,笛の基本の楽句である(じ)の種類によって分類されることが多い。すなわち,呂中干(りよちゆうかん)の地といわれる共用の地を用いる〈序ノ舞〉〈真(しん)ノ序ノ舞〉〈中ノ舞(ちゆうのまい)〉〈早舞(はやまい)〉〈男舞(おとこまい)〉〈神舞(かみまい)〉〈急ノ舞〉〈破ノ舞(はのまい)〉などと,それぞれが固有の地を用いる〈楽(がく)〉〈神楽(かぐら)〉〈羯鼓(かつこ)〉〈鷺乱(さぎみだれ)(《鷺》)〉〈猩々乱(《猩々》)〉〈獅子(《石橋(しやつきよう)》)〉〈乱拍子(《道成寺》)〉などの2種がある。〈序ノ舞〉は女体,老体などの役が物静かに舞うもので,《井筒》《江口》《定家》などの大小物と《小塩(おしお)》《羽衣》などの太鼓物がある。…

【望月】より

…そこへ偶然,主人安田庄司の敵(かたき)である望月秋長(もちづきのあきなが)(ワキ)が宿泊する。小沢はなにくわぬ顔で望月を歓待し,花若の母を盲御前(めくらごぜ)に仕立てて花若とともに座敷に出し,曲舞(くせまい)を歌わせたり,花若に太鼓踊をさせたりした末(〈クセ・羯鼓(かつこ)〉),自分も獅子舞を舞う(〈獅子〉)。そして望月が居眠ったすきを見ておどりかかり,花若と2人で敵討ちをしとげる。…

【乱序】より

…〈安摩乱声〉も,同一旋律を三つの声部が少しずつずらせて奏するが,ほかの乱声と同じくリズムが非拍節的である点が大きく異なる。能の乱序は〈獅子〉という舞事の前奏として奏されるもので,その後半に舞手が登場する。登場の直前に露ノ手(露ノ拍子などとも)と称する特別な部分が挿入されるので,乱序は序奏部分・露ノ手・登場部分という構成になる。…

※「獅子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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