日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
金融機能早期健全化緊急措置法
きんゆうきのうそうきけんぜんかきんきゅうそちほう
バブル経済崩壊後、金融機能の低下した金融機関に予防的に公的資金を注入できるよう定めた法律。平成10年法律第143号。正式名は「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」。1998年(平成10)10月に成立・施行し、都市銀行や地方銀行など32行に計8兆6000億円の公的資金を注入した。2001年3月末(信用金庫、信用組合向け注入は2002年3月末)に注入申請は期限切れとなったが、その後金融危機が起きるたびに予防的注入を規定した法律がつくられ、2008年の世界金融危機に際しては予防注入を定めた新たな金融機能強化法がつくられた。
金融再生法が金融機関の破綻(はたん)後の処理策を定めているのに対し、早期健全化法は破綻前の処理ルールを規定。破綻状態に陥っていないものの自己資本比率が低下した金融機関に、経営責任の追求など一定の条件下で公的資金を注入し資本増強すること、経営不振の金融機関を経営統合などの形で健全な金融機関が引き受ける際に公的資金を注入できること、などを定めている。
バブル崩壊後、公的資金注入の根拠法としては、金融機能安定化法(公的資金注入額1兆8000億円)、改正預金保険法(1兆9000億円)、金融組織再編成促進特別措置法(60億円)、金融機能強化法(2009年6月時点で新旧法あわせて2000億円以上)が次々と施行したが、資本増強のための公的資金の注入額では早期健全化法が最大であった。
[矢野 武]