日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄道電化」の意味・わかりやすい解説
鉄道電化
てつどうでんか
電気エネルギーを外部から供給し、動力車内で機械エネルギーに変換して車両を運転する方式。直流式と交流式がある。
直流式電気機関車が初めて公開運転されたのは、1879年ベルリン勧業博覧会においてである。営業運転も同じベルリンにおいて、鉄道馬車にかわる市街鉄道として開始された。日本でも1895年(明治28)京都市に路面電車が登場している。その後、列車頻度の高い大都市近郊、石炭資源が乏しく水力電気の豊富な地域、トンネルの多い勾配(こうばい)線区を中心に採用されてきた。
交流方式は1899年、スイスの山岳線で三相二線式が使われたのが始まりである。ついでイタリアを中心に採用されてきたが、架線構造が複雑な欠点もあって、三相交流方式は新交通システムのような特殊な場合を除いて、一般の鉄道では廃止される傾向にある。現在交流電化の主流となっている単相交流方式は、1907年スイスで15ヘルツ整流子電動機が開発されたのを契機に、ヨーロッパに普及した。ヨーロッパの低周波単層交流には、主として16と2/3ヘルツが用いられた。その後、整流装置の発達とともに、通常の商用周波数の電源を使用する方式が開発され、日本でも1957年(昭和32)から国鉄(現JR)仙山線で採用された。
交流式は直流式と比較して、〔1〕高電圧が使用できるので給電設備費が安価である、〔2〕電気車の粘着性能が優れている、〔3〕電食防止対策が不要である、〔4〕大容量高速鉄道に適する、などの長所がある。しかし、通信線に対する誘電障害、電源電力の不平衡などについての対策が必要である。
鉄道電化方式は、使用電圧や周波数によっても各種の方式がある。これは各国の鉄道電化の沿革に起因している。新たに電化を始める国や、直流電化に行き詰まりを感じる国を中心に、商用周波数の単相交流方式が多くなっていくと考えられるが、すでに直流電化線区や、特殊周波数交流電化線区を有している国では、車両運用上従来からの方式での建設も進められている。
[藤原昭男]