化学辞典 第2版 「長寿命高励起原子」の解説
長寿命高励起原子
チョウジュミョウコウレイキゲンシ
long-lived highly-excited atom
原子の1個の電子が大きい主量子数nをもった,高いリュードベリ準位に励起された状態をいう.この励起準位は,その原子の第一イオン化電圧に近く,また孤立系で脱活しにくく長い寿命をもつ.水素原子についての理論的取り扱いで,その寿命は n4.5 に比例するといわれ,10-5 s の寿命をもつためにn = 10程度と考えられる.一方,この励起種は第三物質,原子,分子,電極などの近くで大きな断面積でイオン化し,また比較的弱い電場のなかでもイオン化する.さらにSF6などの熱電子を捕獲する分子,またアセトニトリルなどの分子と反応し,非常に大きな断面積で電子移動反応をし,次のように正イオンと負イオンを生成する.
A** + B → A+ + B-
この反応の断面積は,SF6およびアセトニトリルについて 10-12 cm2 と求められており,その作用半径は5 nm にもなる.この反応を利用して,長寿命高励起種の検出にSF6を使用し,SF6-の量で測定するリュードベリ検出器がある.分子では水素分子の長寿命高励起状態が知られている.これらの状態は寿命が長く,反応断面積が大きいことから放電現象などでの挙動が注目されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報