日本大百科全書(ニッポニカ) 「長沼層」の意味・わかりやすい解説
長沼層
ながぬまそう
三浦半島北端、横浜市栄区長沼町の柏尾(かしお)川沿いを模式地とする中部更新統相模(さがみ)層群最下部の地層。下位の鮮新統~下部更新統上総(かずさ)層群を不整合に覆い(長沼不整合)、相模層群下部屏風ヶ浦(びょうぶがうら)層に不整合で覆われる。伊豆半島北縁から大磯(おおいそ)丘陵、さらに三浦半島北縁にかけて生じた東西方向の凹地(相模堆積(たいせき)盆地)への一連の海進堆積物の中・下部層にあたる。全層厚約65メートルで、最下部の礫(れき)層・泥炭層・シルト層、下部のシルト~細砂層、中部砂層、上部の多数の凝灰岩を挟在する砂層の4部層に区分される。本層中からは、現在本州中部以南に生息する100種近い貝化石が発見されている。共通する貝化石がみられる大磯丘陵の二宮(にのみや)層群中部と対比されている。
[伊藤谷生・笠間友博]
長沼層を堆積させた海進も、全世界的な気候変動との関連性が考えられるようになった。過去の気温を推定する手がかりとなる深海底堆積物の酸素同位体変動曲線(海洋酸素同位体ステージ)は曲線の山(間氷期)に奇数番号を、谷(氷期)に偶数番号をつけて時代を区分させているが、これと対比させると、長沼不整合が約60~65万年前のステージ16の顕著な寒冷化による海水面低下で形成され、長沼層を堆積させた海進は、その直後のステージ15の温暖期の海水面上昇に相当すると推定されている。
[笠間友博]