門脈閉塞症

内科学 第10版 「門脈閉塞症」の解説

門脈閉塞症(肝静脈閉塞症・門脈閉塞症)

肝外門脈閉塞症(extrahepatic portal obstruction:EHO)とは肝門部を含めた肝外門脈の閉塞により門脈圧亢進症をきたす症候群である.
病因
 原発性肝外門脈閉塞症と続発性肝外門脈閉塞症に分類される.原発性肝外門脈閉塞症の病因は不明だが血管形成異常,血液凝固異常,骨髄増殖性疾患の関与などが疑われている.続発性肝外門脈閉塞症の原因としては新生児臍炎,腫瘍肝硬変や特発性門脈圧亢進症に伴う肝外門脈血栓,胆囊胆管炎,膵炎,腹腔内手術などがある.
病態生理
 形態学的には門脈本幹の閉塞とこれに伴う門脈圧亢進症に対する求肝性側副血行路である海綿状血管増生(cavernous transformation of the portal vein:CTPV)の形成が特徴である.組織学的には門脈域に軽度の炎症細胞浸潤や線維化を認めることがあるが,基本的には肝硬変の所見は呈さず,肝の小葉構造はほぼ正常である.
臨床症状
 門脈圧亢進症の程度に応じて食道・胃静脈瘤,異所性静脈瘤,門脈圧亢進症性胃症,腹水,肝性脳症,出血傾向,脾腫,貧血,肝機能障害などの症候を示す.側副血行路の発達が著明な場合は門脈圧亢進症状を呈さない場合もある.
検査成績
血液生化学検査では脾機能亢進に伴う1つ以上の血球成分の減少を認める.血液凝固系は正常であり,肝機能障害はあっても多くは軽度異常にとどまる. 腹部超音波やCT,MRIでは肝門部を含めた肝外門脈の閉塞と著明な求肝性側副血行路の発達を認める.肝内門脈枝や肝静脈枝は開存している.肝の萎縮は目立たないが脾腫を認める場合が多い.門脈造影では肝外門脈の閉塞と求肝性側副血行路の発達を認める.消化管内視鏡では食道・胃静脈瘤,異所性静脈瘤などを認める.画像検査所見で肝門部を含めた肝外門脈の閉塞と求肝性側副血行路の形成の確認により診断される.
予後
 原発性肝外門脈閉塞症は門脈圧亢進症に伴う胃・食道静脈瘤などが重要な合併症でありこれらのコントロールがされれば予後は良好である.一方,続発性肝外門脈閉塞症の予後は原因疾患および胃・食道静脈瘤により決定される.[松井 修・小林 聡]
■文献
門脈血行異常症の診断と治療のガイドライン 厚生労働省特定疾患門脈血行異常症調査研究班平成18年度研究報告書,2007.
Bayraktar UD, et al: Hepatic venous outflow obstruction: Three similar syndromes. World J Gastroenterol, 13: 1912, 2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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