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食道静脈瘤 しょくどうじょうみゃくりゅう esophagus varices

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

食道静脈瘤
しょくどうじょうみゃくりゅう
esophagus varices

肝硬変や門脈圧亢進症などの際に,食道壁の静脈が異常に拡張し,嚢状となった状態をいう。持続的に少量の出血をみたり,一時的に大出血を起して出血死することもあるので,出血を避けるために軟らかい食事をとり,心身の安静を保つ必要がある。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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栄養・生化学辞典の解説

食道静脈瘤

 肝硬変などが原因で食道壁の静脈の血流量が上がって圧力がかかり静脈の拡張がみられること.

出典|朝倉書店
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家庭医学館の解説

しょくどうじょうみゃくりゅう【食道静脈瘤 Esophageal Varices】

[どんな病気か]
 食道の粘膜下(ねんまくか)にある細い静脈がこぶ(瘤)のようにふくれて拡張し、蛇行(だこう)する病気です。
 瘤が破れると大出血して、吐血(とけつ)、下血(げけつ)が生じ、手当が遅れると出血性ショックをおこして死亡することもある、こわい病気です。
[原因]
 食道静脈瘤ができる原因のうち80%が肝硬変症(かんこうへんしょう)、20%がそれ以外の病気(特発性門脈圧亢進症(とくはつせいもんみゃくあつこうしんしょう)、肝外門脈閉塞症(かんがいもんみゃくへいそくしょう)など)とされています。いずれの場合も、胃・腸・脾臓(ひぞう)などから肝臓へ向かう血管(門脈)の血流がうっ滞(たい)して(とどこおって)、門脈圧が高くなることがこの病気の始まりとなります。
 この状態を門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)といいますが、こうなると、うっ滞した門脈血が大量に食道方向へ流れ始め、また食道・胃へ流入する動脈血もそのまま食道方向へ流れ始めます。その結果、食道の粘膜下の細い静脈に大量の血液が流れ込み、瘤のように膨らんで、静脈瘤が発生するのです。
[症状]
 食道静脈瘤があるだけでは症状はありません。たとえあったとしても、ものを飲み込みにくいなどの軽い症状です。しかし、いったん瘤が破れると、突然、大出血にみまわれます。その場合は一刻も早く救急病院に運び、緊急処置(後述)を受けなくてはなりません。
 また、原因疾患である肝硬変症(かんこうへんしょう)などによって、手のひらが赤らむ、前胸部などの皮膚にクモが足を広げたような形の赤い斑(はん)ができる、脾臓(ひぞう)が大きく腫(は)れて赤血球(せっけっきゅう)・白血球(はっけっきゅう)・血小板(けっしょうばん)が減少する、腹部に水がたまる(腹水(ふくすい))、胃粘膜が弱り出血しやすい、などの症状がみられます。
 肝臓のはたらきが衰えると、黄疸(おうだん)や意識障害肝臓がんの合併などの症状もみられます。
[検査と診断]
 食道の内視鏡検査がまず行なわれます。この検査によって静脈瘤の発達程度や、破裂・出血の危険性の度合いが正確に判定できます。
[治療]
 瘤が突然破れて大出血した場合は、止血のための緊急処置が最優先されます。
 その方法としては、内視鏡で観察しながら、硬化剤という薬剤を出血した血管に注射して静脈瘤を固めてしまう硬化療法(こうかりょうほう)、輪ゴムのようなリングで静脈瘤血管を縛る結紮療法(けっさつりょうほう)、先端に風船のついた長いチューブを用いて食道の内側から圧迫するバルーン圧迫法などがよく行なわれます。
 このような緊急処置で止血したのち、本格的な治療法が引き続いて行なわれます。それには、患者さん一人ひとりの全身状態、肝機能、静脈瘤の状態などを総合的に判断して、硬化療法や結紮療法を追加するか、あるいは外科手術を行なうかが検討されます。硬化療法や結紮療法は簡便ですが、長期間、反復して徹底的に行なわないと再発の心配があるからです。手術をすれば再発の心配は少なくなりますが、肝機能が悪い場合などでは実施できません。
 なお、今まで破裂したことがなくても、破裂の危険が迫っているとみられる静脈瘤の場合は、大出血予防のために、これらの治療を受けることが勧められます。

出典|小学館
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世界大百科事典 第2版の解説

しょくどうじょうみゃくりゅう【食道静脈瘤 esophageal varices】

小腸や脾臓と肝臓を結ぶ門脈の血圧(門脈圧)が高くなった結果,血流に迂回路が生じて,食道の粘膜下に静脈瘤が生じた状態。肝硬変などの肝臓疾患によって,門脈から肝臓への血流が障害されたり,バンチ症候群などによって,門脈に流入する血流量が異常に増大すると,門脈圧は異常に亢進する。すると門脈を流れる血液は胃静脈→食道静脈,門脈→臍(さい)静脈→腹壁静脈などの迂回路を経て大静脈へと流れるようになる。ところが,これらの迂回路となる静脈は血流に比して細いために,各所に静脈瘤を形成することになる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

食道静脈瘤
しょくどうじょうみゃくりゅう

食道静脈系に発生した静脈瘤で、門脈系の循環障害に基づく門脈圧亢進(こうしん)症に伴う重篤な一症状である。上部食道の静脈叢(そう)は奇静脈を経て下大静脈へ、下部食道の静脈叢は胃静脈を経て門脈へ通じており、門脈圧が亢進すると遠肝性副血行路として食道粘膜下静脈の拡張や屈曲蛇行がおこり、食道静脈瘤を形成する。また、胃上部における動静脈シャント(短絡)形成などによる局所的循環亢進状態も食道静脈瘤形成に関与している。食道静脈瘤の原因疾患としては肝硬変、特発性門脈圧亢進症、日本住血吸虫症などがあげられるが、日本門脈圧亢進症学会による1993~1996年(平成5~8)のわが国の食道静脈瘤を有する門脈圧亢進症例の全国集計では2242例中、肝硬変症は2139例(95.4%)である。[掛川暉夫・北川雄光]

症状

症状としては吐血と下血であるが、他の上部消化管出血と比べてその予後は不良であり、以前は初回の出血で約半数が死亡するとされていた。診断としては食道造影と内視鏡検査が主体となる。近年では、静脈瘤の血行動態を詳細に把握する目的で、超音波内視鏡や3D-CT(三次元断層画像CTスキャン)を行っている施設もある。検査としては内視鏡検査がとくに重要であり、静脈瘤の位置や形態、色調による分類がなされるが、静脈瘤に赤色の所見が見られた場合、出血のリスクが高いとされており注意が必要である。食道静脈瘤が吐血・下血として発症した場合は緊急事態であり、血管確保や酸素投与などショックに対する治療を行い、場合によっては気管内挿管をためらわずに行い、誤嚥(ごえん)性肺炎や窒息をさける必要がある。[掛川暉夫・北川雄光]

治療

食道静脈瘤に対する治療は、緊急時の止血および待機的予防治療に大別される。緊急時の止血目的には止血効果の高い治療を選択するべきであるが、2009年の時点での第一選択は内視鏡的止血術であり、補助的に薬物療法やバルーン圧迫法が行われる。待機的予防治療に関しても、やはり内視鏡的治療の成績が良好であり、外科的手術が選択されることはほとんどない。食道静脈瘤を有する患者は肝硬変を背景にしていることが多く、肝予備能や肝癌(がん)の合併の有無などを考慮し適切な治療方針を立てることが重要である。以下に各治療法の概要を述べる。[掛川暉夫・北川雄光]
薬物療法
バソプレッシンは強力な血管収縮作用を有し、内臓血管を収縮させ、ひいては門脈圧を低下させる。合併症として狭心症、徐脈、心筋梗塞、高血圧、尿量低下があり、とくに心筋障害や腎障害を有する患者への投与は禁忌である。
 ニトログリセリンは肝内外門脈系の血管抵抗性減弱と動脈系血管拡張による反射性内臓血管収縮により門脈圧を低下させる。
 非選択的β(ベータ)受容体拮抗薬は、β1遮断作用による心拍出量低下とβ2遮断作用による臓器レベルでの血管拡張抑制による門脈圧低下作用を有する。[掛川暉夫・北川雄光]
バルーン圧迫法
食道静脈瘤は通常、噴門部静脈瘤から食道胃接合部のいわゆるスダレ血管を経て形成される上行性の血流経路である。したがって噴門部あるいは出血部をバルーンにより圧迫することで、止血効果を得る。S-Bチューブ(Sengstaken-Blakemore tube)とよばれるバルーンの付いたチューブを経鼻的に胃内まで挿入し、バルーンを膨らませる。現在では食道静脈瘤出血の第一選択は内視鏡治療であり、S-Bチューブを用いる機会は少なくなったが、内視鏡治療に習熟した専門医が不在の場合や大量出血で内視鏡的に視野が不良の場合、また末期肝癌合併患者に症状緩和のための治療に用いられることがある。[掛川暉夫・北川雄光]
内視鏡治療

(1)内視鏡的静脈瘤結紮(けっさつ)術(EVL:endoscopic variceal ligeation) EVLは手技が比較的簡便であり、高い止血率が得られ、薬剤を使用しないことから合併症が少なく、食道静脈瘤治療の第一選択となっている。内視鏡的に(内視鏡を用いて)、O(オー)リングO-ringとよばれる輪ゴムで静脈瘤を結紮する。補助的に内視鏡的硬化療法(EIS)やAPC焼灼(しょうしゃく)術(APCとはアルゴンプラズマ凝固Argon Plasma Coagulation)を行うことが多く、これを地固め療法とよんでいる。
(2)内視鏡的硬化療法(EIS:endoscopic injection sclerotherapy) EISは内視鏡的に硬化剤を粘膜下や血管内に注入する治療法である。肝予備能の低い症例では使用不可能であり、近年では侵襲が少なくより確実な止血が得られるEVLが普及しているため、第一選択として使用されることは少ない。[掛川暉夫・北川雄光]

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世界大百科事典内の食道静脈瘤の言及

【胃】より

…(1)胃の血管系 胃を灌流する血管は腹腔動脈から分岐し,脾動脈,総肝動脈,胃十二指腸動脈などを経て左・右胃大網動脈,左・右胃動脈へと分かれ,胃壁内を循環して,それぞれの動脈に対応する静脈へと返る。とくに左胃静脈は噴門で食道静脈に合流するので,門脈圧が高くなっているときには,この経路を通して食道静脈圧が高くなり,食道静脈瘤形成の原因となる。また,胃の背側にある膵尾部の癌が大きくなって脾静脈の血流を障害すると,短胃静脈や左胃大網静脈圧が高くなって,胃静脈瘤形成の原因となる。…

【肝不全】より

…臨床的に,プロトロンビン時間の延長は,そのよい指標となる。門脈血流が障害されると,その血流は胃や食道壁の静脈を通る側副血行路を作り,胃,食道静脈瘤が生じる。出血傾向が高まると,その破裂による大量の消化管出血を招き,生命に危険が生じる。…

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