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門脈圧亢進症 もんみゃくあつこうしんしょうportal hypertension

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

門脈圧亢進症
もんみゃくあつこうしんしょう
portal hypertension

門脈血流路のどこかに狭窄閉塞が起り門脈圧が亢進し,そのために脾腫,副行血行路の形成,貧血をきたす病態をいう。症状として,食道静脈瘤を発現した場合,それが破綻を起せば致命的な大出血の原因となる。特発性と続発性とがあり,後者は,肝硬変,脾静脈または肝外門脈の狭窄や閉塞,先天性の門脈形成不全症,住血吸虫症肝臓癌などによる。特発性門脈圧亢進症は,現時点で原因が明らかでないもので,いわゆるバンチ症候群 (→脾性貧血 ) である。 35歳以下で発病するものが多く,女性に多い。第1期は脾腫を伴う貧血期で,白血球減少と脱力,出血傾向が現れる。第2期には肝腫大が起り,皮膚がきたない褐色になる。第3期は末期で,肝臓は硬変萎縮し,腹水が貯留する。初期には貧血に対して鉄剤,血小板減少に対して ACTHや副腎皮質ホルモンが有効である。早期に脾臓を摘出すると,血液像が著しく改善される。

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百科事典マイペディアの解説

門脈圧亢進症【もんみゃくあつこうしんしょう】

門脈の狭窄(きょうさく)または閉塞(へいそく),まれに肝静脈閉塞により門脈圧が持続的に上昇した状態。原因疾患は肝硬変バンチ病など。胃腸の鬱血(うっけつ),腹水,脾腫(ひしゅ)などを生じ,血流が他の経路を通る結果,食道下端・直腸・腹壁静脈の拡張を起こす。

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家庭医学館の解説

もんみゃくあつこうしんしょう【門脈圧亢進症 Portal Hypertension】

[どんな病気か]
 正常な人の門脈(もんみゃく)(コラム「門脈とは」)内の圧(門脈圧(もんみゃくあつ))は、あおむけに寝た状態(背臥位(はいがい))で、水柱圧で100~150mmH2Oです。この圧が200以上のときを、門脈圧が亢進(こうしん)しているといいます。
 門脈圧は腹圧(ふくあつ)、体位、歩行、食事、せきなどの影響を受け、生理的にも変動しますが、門脈圧亢進症という場合は、門脈系におこる血流の循環障害(じゅんかんしょうがい)によって、門脈内の圧が高くなり、いろいろな症状が現われた場合を指します。
 つまり、肝臓(かんぞう)を中心とした血液循環の異常として理解されるべき病態で、原因となる病気としては肝硬変(かんこうへん)(「肝硬変」)がもっとも多いものです。
 門脈圧亢進症は、それをおこした原因となる部位から、肝前性(かんぜんせい)、肝内性(かんないせい)、肝後性(かんごせい)に分類されています。肝前性には門脈血栓症(もんみゃくけっせんしょう)(「門脈血栓症」)が、肝内性には肝硬変症が、肝後性にはバッド・キアリ症候群(しょうこうぐん)(「バッド・キアリ症候群」)があげられます。
 また、肝内性で原因が不明な特発性門脈圧亢進症(とくはつせいもんみゃくあつこうしんしょう)があります。
[症状]
 門脈の正常な血流が障害される結果、静脈血(じょうみゃくけつ)が肝臓を迂回(うかい)して大静脈系(だいじょうみゃくけい)に流入するようになります。門脈系と大静脈系との間に側副血行路(そくふくけっこうろ)という血液の通り道(循環系)が形成されます。症状は、その形態異常(けいたいいじょう)によるものと、肝臓の機能不全(きのうふぜん)にともなうものとに分けられます。
 形態異常による症状は、食道(しょくどう)・胃静脈瘤(いじょうみゃくりゅう)およびその破裂(はれつ)による消化管出血(しょうかかんしゅっけつ)(吐血(とけつ)、下血(げけつ))、腹壁静脈怒張(ふくへきじょうみゃくどちょう)、直腸(ちょくちょう)・痔静脈瘤(じじょうみゃくりゅう)などで、ほかに最近注目されているのが門脈圧亢進症性胃症(もんみゃくあつこうしんしょうせいいしょう)です。これは門脈圧亢進によって胃粘膜(いねんまく)の血流が門脈に円滑に還流(かんりゅう)されなくなった状態で、胃粘膜にびらん(ただれ)や出血巣(しゅっけつそう)がみられるものです。
 肝臓機能の低下による症状には、肝性脳症(かんせいのうしょう)といわれる意識障害があります。さらに、形態異常と肝機能低下が複雑にかかわっておこる腹水(ふくすい)と脾腫(ひしゅ)(脾臓(ひぞう)の腫(は)れ)があります。
 以上のように、腹水による腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)、下肢(かし)の浮腫(ふしゅ)(むくみ)、消化管出血にともなう黒色便(こくしょくべん)、意識障害、腹部の血管怒張などが主症状となります。
 脾腫による貧血(ひんけつ)がもたらす動悸(どうき)や息切れは、貧血が徐々に進行するせいか、それほど強くないようです。
[検査と診断]
 血液検査を行なうと、赤血球(せっけっきゅう)・白血球(はっけっきゅう)・血小板(けっしょうばん)の減少がみられ、肝機能検査値にも異常がみられますが、その程度は原因となった病気によってさまざまです。
 食道や胃の病変を調べるために、X線検査または内視鏡検査(ないしきょうけんさ)が行なわれます。とくに内視鏡は診断の確定と静脈瘤の治療方針の決定に不可欠です。
 そのほか、腹部超音波検査(ふくぶちょうおんぱけんさ)やCT検査などの画像検査が簡便で有用であり、外来で実施されます。さらに血管造影が必要な場合もあります。
[治療]
 食道静脈瘤と胃静脈瘤の治療、腹水の治療、脾腫の治療とに分けて述べます。
●食道静脈瘤と胃静脈瘤の治療
 内視鏡検査の結果、静脈瘤が大きく、また発赤(ほっせき)(赤らみ)がある場合は破裂しやすいため、予防措置として血管を固める薬剤を注入する方法(硬化療法(こうかりょうほう))や、血管を縛(しば)る結紮療法(けっさつりょうほう)、さらに両者の併用法が行なわれ、良好な治療成績を収めています。
●腹水の治療
 肝硬変による腹水には、減塩食と利尿薬(りにょうやく)の使用が有効なことが多いのですが、体内のアルブミンが減ってくると反応しません。そこで、点滴(てんてき)などの非経口的(ひけいこうてき)な方法でアルブミンを補います。
●脾腫の治療
 肝硬変の際、脾腫が貧血の原因になっているとの想定から、脾臓を摘出(てきしゅつ)したり、部分的に梗塞(こうそく)(血管の閉塞(へいそく))をつくって改善させる方法(経脾動脈的部分脾塞栓術(けいひどうみゃくてきぶぶんひそくせんじゅつ))があります。しかし、脾腫は肝硬変の病状進展と密接に関連しているため、問題がないわけではありません。
[日常生活の注意]
 定期的に検査を受けることです。また、肝硬変は慢性肝炎(まんせいかんえん)が進行してなるものですから、肝炎の治療が最大の予防法でもあります。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

門脈圧亢進症
もんみゃくあつこうしんしょう

種々の疾患において、門脈系への流入血量の増加と、肝内外での門脈血流抵抗の増大とが原因となって門脈圧が上昇した状態を総称して門脈圧亢進症という。胃、十二指腸、小腸、大腸、膵臓(すいぞう)、脾臓(ひぞう)などの腹部臓器からの静脈血は、門脈とよばれる直径約11ミリメートルの太い血管に集まって肝動脈と平行して肝臓に入り、そこで代謝を営んでから心臓へ還流する。この門脈を流れる静脈血の圧力(門脈圧)は、正常では100~150ミリメートル水柱であるが、門脈圧亢進症では通常200ミリメートル水柱以上となる。
 門脈圧が上昇すると、食道や胃の粘膜下に静脈瘤(りゅう)を形成し、破裂による突然の大量吐血や下血、および肝機能障害による肝不全とが二大死因となる。また腹水、脾腫(ひしゅ)・脾機能亢進症状(白血球・血小板・赤血球などの減少)、手掌紅斑(こうはん)、クモ状血管腫、腹壁静脈怒張などを呈し、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の合併率も通常の約10倍と高い。
 治療としては、静脈瘤出血の防止に対して手術がもっとも効果的である。手術法は、食道あるいは胃の離断術などの各種直達手術が多く、また選択的シャント手術や内視鏡的治療も行われている。欧米では門脈下大静脈吻合(ふんごう)術などの門脈減圧手術が多く、日本でも近年試みられるようになった。高度肝機能障害などによる手術不能例、静脈瘤出血時の緊急処置として内視鏡的静脈瘤硬化療法などもあるが、永続的効果は十分でない。脾腫・脾機能亢進症状に対しては、副腎(ふくじん)皮質ホルモンも用いられるが、手術による脾摘除がもっとも永続的に効果がある。また肝機能障害、腹水に対しては、安静、食事、薬物療法を行う。
 以下、門脈圧亢進症を呈するおもな疾患と特徴について述べる。
(1)肝硬変 門脈圧亢進症の大多数を占め、肝機能障害を伴っているので静脈瘤出血に続いて肝不全が誘発されやすく、出血後1か月以内の死亡率は30~50%と高い。したがって出血既往例はもとより、未出血例でも静脈瘤高度の場合は予防的に手術を要する。なお、肝硬変では肝癌(がん)を続発しやすい。
(2)特発性門脈圧亢進症 バンチ病、バンチ症候群、肝線維症などとよばれていた疾患に由来するもので、肝硬変がないのに原因不明で脾腫・脾機能亢進症状が著明で門脈圧が亢進するところから特発性門脈高圧症あるいは特発性門脈圧亢進症とよばれる。日本では比較的多く、中年の女性に好発する。肝機能障害が軽度なので、脾摘除と静脈瘤出血防止の手術により予後は良好である。特定疾患(難病)に指定されている。
(3)肝前門脈閉塞症 先天性門脈形成異常ともよばれていたが、門脈本幹などの血栓閉塞が原因と考えられるようになった。多くは小児例であり、乳児期には腹水が著明であるが、3~5歳以後に静脈瘤出血をおこす。肝臓は形態的にも機能的にも異常が少ないので、静脈瘤出血による死亡率が低く、吐血や下血を反復する例が多い。また、手術後の予後は良好である。
(4)バッド‐キアリBudd-Chiari症候群 肝静脈と下大静脈とがともに閉塞しているための門脈圧亢進症で、肝臓はうっ血のため二次的に肝硬変になる。また、下大静脈閉塞による腎機能障害、下肢の浮腫・潰瘍形成、腹壁静脈怒張などが特徴的である。特定疾患(難病)に指定されている。
(5)その他 日本住血吸虫症による門脈圧亢進症などがある。[青木春夫]

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世界大百科事典内の門脈圧亢進症の言及

【血管雑音】より

…小児でも同様な雑音が胸鎖関節上で聴取できることがあるが,一般に臨床的意義は少ないとされている。また,臍(さい)静脈の先天性開存を伴う門脈圧亢進症(Cruveilhier‐Baumgarten症候群)で,腹壁の拡張した静脈で雑音を聴取することがあるが,これは連続的でハイピッチである。【三島 好雄】。…

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