間脳・大脳基底核障害の特徴

内科学 第10版 の解説

間脳・大脳基底核障害の特徴(局所診断の進め方)

(1)間脳の障害
 間脳は視床と視床下部から構成される.
1)視床の症候: 
a)感覚脱失:視床は本質的には感覚の中継基地である.表在感覚・深部感覚とも四肢・体幹からは対側の外側後腹側核(VPL)へ,顔面からは対側の内側後腹側核(VPM)へ投射する.視床病変では全感覚障害が生じる(図15-2-2右).深部感覚が高度に障害されると,粗大な不随意運動と見紛うほどの激しい失調性の運動が上肢優位に出現する.視床手にも深部覚障害が関与している(図15-2-8).
b)視床痛:感覚脱失と同様に視床後腹側核(VPL,VPM)の傷害により対側半身に生じる頑固な自発性の持続痛である.
2)視床下部の症候:
視床下部は自律神経と神経内分泌機能の中枢であり,前者の障害では体温調節障害が生じ,後者の障害では尿崩症,食欲障害などが生じる.
(2)基底核の障害
 基底核は尾状核,被殻,淡蒼球,視床下核と黒質を指し,これらを錐体外路系とよぶ.基底核障害の症候は運動過多(舞踏運動,バリズムなど)と運動過少(Parkinson症状)に大別される.基底核の機能は同側の皮質脊髄路(錐体路)機能の調節である.錐体路は交叉するために,一側の基底核障害の症候は対側上下肢に現れる.
1)Parkinson症状:
黒質に代表されるドパミン系の機能障害である.寡動,筋強剛,安静時振戦,姿勢反射障害として現れる.瞬目,唾液嚥下など無意識に行われる運動の量が減ることから凝視,流涎がみられる.紐結びなど左右の手で異なった動きをしなければならない動作が優位に障害される.
2)舞踏運動(chorea):
線条体障害の症状であり,脳梗塞などでは一側性に現れることがある.四肢末梢優位の不規則な速い不随運動である.
3)バリズム(ballism):
視床下核の病変で生じる.四肢全体の激しい不随意運動で,投げ出すような,打ちつけるような動きである.
4)ジストニー(dystonia):
主動筋と拮抗筋が同時に活動することによって生じる異常な筋緊張状態で,さまざまの異常姿位を示す.
5)ジスキネジー(dyskinesia):
ジストニーの要素を伴った不随意運動である.
6)アテトーゼ(athetosis):
手指その他の部位を一定姿位に保つことができず,常時ゆっくりと動かしている不随意運動である.線条体の病変による.[中野今治]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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